新型コロナワクチンの3回目接種が、まもなく12月から始まります。しかし、ワクチン接種を行うには医療従事者が欠かせません。必要な人員を捻出するために、通常の医療の現場にしわ寄せがいくことも。看護師のCさんは、ワクチン接種が佳境だった夏のころを振り返り、「病棟から人が減り、患者さんに負担をかけてしまった。あのような日々がまたやってくるのかと思うと心配だ」と話します。
Cさんの勤務する病院にはワクチン接種会場が設けられ、看護師が「コロナワクチンを打つ係」「打った後の観察をする係」などで接種に日々かかわっています。しかし、そのために新たに看護師を雇ったりはしておらず、病棟の看護師たちが派遣されているといいます。
「接種時間の午後になると、私の働いている病棟から看護師が2人いなくなる状況が続いています」とCさん。「もともと病棟の看護師の配置には余裕がない上、コロナ禍で配慮することも増えて『いっぱいいっぱい』の状態です。そこに接種の仕事が追加され、現場は混乱しました」と話します。
病棟に看護師の人数が少なくなった分、臨機応変に患者さんに対応するのが難しくなる事態も。
「緊急入院が重なりかなり忙しくなった日がありました。接種会場から派遣されている2人が戻ってきたら、手伝ってもらおう…思っていましたが、一向に戻ってこなくて。どうも予防接種に遅刻してきた方がいて、終了時刻が予想外に伸びたためでした」
緊急入院の患者さんの対応に時間がとられ、気がつけば夕方の点滴や注射の時間も刻一刻と迫ってきていました。「ナースコールが聞こえても、誰も対応できないほどで…接種会場から帰ってきた2人の姿を見てホッとしたのを覚えています」
Cさんによると、「このようなことは全ての接種会場や病院に当てはまるわけではない」そうですが、同じような悩みをほかの職場で働く看護師から聞くこともあるそうです。
最近はワクチンの摂取率が上がったことで、予防接種する人数が多い時の半分に減り、比較的早めに病棟に戻れる時も増えています。しかし3回目の予防接種が開始される予定と聞き、病棟には不安が広がっています。
特に、接種でトラブルが起きると、看護師の戻りが遅くなるなど、影響が大きくなります。これまでには接種の時間に「間に合わない」と急ぎ、会場の前で転んで大きな怪我をされた方もいたそうです。「結局そのまま別の病院に運ばれることになりましたが、看護師たちも対応に追われました」
服の袖が上がりきらず、服を脱いで接種することになる人も多いそう。「その場合、バスタオルをかけたりして、見えないよう配慮をしますが、どうしても他の人の視線も気になりますし、接種する看護師のほうも気をつかいます」。
新型コロナは海外では感染が再拡大していますし、今後も医療現場はどうなるのか分からない状況が続いているといいます。通常の医療を提供する合間を縫ってワクチン接種にかかわる医療従事者のことを思い、スムーズに接種が受けられるように心がけたいものです。