「日本一猫にやさしい街づくり」を目指すプロジェクトが、官民連携でスタートした。タッグを組むのは、岐阜県飛騨市と、全国で保護猫カフェを運営するネコリパブリック。ふるさと納税を活用し、地域の人と猫を助けるソーシャルビジネスを始動させる。
平成16年に2町2村の合併により生まれた飛騨市は、当時約3万人だった人口が、現在は約2万3000人まで減少。過疎化に伴い、高齢化や空き家問題などの社会課題に直面している。猫の手を借りてそれらを解決し、さらには猫たちも幸せにしようというのがこのプロジェクト「SAVE THE CAT HIDA」だ。
計画している事業は、どれもユニークかつ合理的。社会性と収益性が循環することで、無理なく継続できる仕組みとなっている。
例えば、地域猫の個体数や避妊・去勢手術の有無といった情報をデータベース化する「猫勢調査」。猫たちに必要な処置を「見える化」することで、多頭飼育崩壊や虐待の防止にもつながる。また、一人暮らしの高齢者に保護猫を預かってもらう「ネコミュニティー」は、アニマルセラピー効果が期待できるほか、巡回型訪問見守りを同時に行うことで高齢者の孤立化も防ぐ。これらは社会性が際立つ事業の例だ。
一方で、空き家を活用した保護猫カフェや猫と暮らせるシェアハウス、地域の名産品に限定猫パッケージを施して全国に販売する「猫プロダクト開発」なども計画していて、こちらは収益につながる事業。社会性、収益性のあるこれらのプロジェクトを同時に走らせることで、猫にとっても人にとっても魅力的な街づくりを目指す。
資金調達は「飛騨市ふるさと納税活用ソーシャルビジネス支援事業」を活用する。これは、飛騨市の社会課題解決に向けたソーシャルビジネスを立ち上げる事業者に、ふるさと納税の支援金から事業費を交付する全国でも珍しい制度。交付されるのは支援金の5割で、残る5割は返礼品や経費に使用。資金調達の目標額は5億円だ(交付金としては2.5億円)。
飛騨市の地域振興係長、土田憲司さんによると、飛騨市は猫の殺処分がほとんどない町だという。その上で今回のプロジェクトを認定した理由についてこう語る。
「提案を受けてリサーチしたところ、多頭飼育崩壊や高齢者の方が飼っている猫の将来など、殺処分につながる課題が少なからずあることがわかりました。市としては、地域で暮らす猫も人も幸せでいてほしい。このプロジェクトは、社会と猫が支え合うことで多くの命が幸せになれる画期的な取り組みでした」
プロジェクトを運営するネコリパブリック代表の河瀬麻花さんは「当社のミッションは、『この世の全ての猫を幸せにする』ことです。とはいえ、民間の力だけではなかなか踏み込めない領域もある。行政と組むことで、互いの足りない部分を補い合いつつ、課題解決に向けて動いていけたら」と期待する。
猫の殺処分数は減少傾向だが、背景には保護猫活動を行う民間ボランティアの存在がある。しかし、こうした活動は資金調達が難しい上、周囲の理解が得られにくい。一方で行政には、猫の保護活動に関するノウハウやマンパワーが足りないという課題がある。
「私たちは、とことん猫のために動ける会社ですし、保護猫活動の実績もある。行政のバックアップを得られれば地域の理解も進みますから、活動の幅も広げていけます。その上で、ビジネスとして収益を得られる仕組みであれば、無理なくみんながハッピーになれるはずです」
プロジェクトを支援するには、楽天やさとふるといったふるさと納税サイトから飛騨市の返礼品を選び、寄付金の用途で「日本一の猫助け事業を飛騨市から!」を選ぶだけ。支援期間は、2021年9月1日から同年12月31日までとなっている。
支援者、地域の人、猫…と関わる誰もが幸せになれるプロジェクト。飛騨市を起点に、猫助け・人助け事業の新たなビジネスモデルが広がっていくかもしれない。
▼ガバメントクラウドファンディング(クラファン式ふるさと納税)
https://event.rakuten.co.jp/furusato/crowdfunding/project/2021/0048/
▼企業型ふるさと納税募集のページ
https://www.neco-republic.jp/save-the-cat-hida-co/
▼飛騨市公式観光サイト(ふるさと納税)
https://www.hida-kankou.jp/tokushuu/furusato-nozei/