東スポ、なぜ餃子を販売?編集局長に聞いた 目標年商は1億円「本気です」

岩崎 正範 岩崎 正範

 〝仰天ネタ〟とはまさにこのこと!? 野球、芸能の裏ネタからプロレス、宇宙人と徹底した娯楽路線を貫いてきた異色の夕刊紙「東京スポーツ」が新たな挑戦で注目を集めている。いつもの記事でナニかやらかしたわけではない。このほど「東スポ餃子」なる商品を開発、今秋から業務用として販売を始めている。

 いくらなんでも新聞社が餃子をわざわざ販売するとはビックリだろう。当初は何かのプロモーションかジョーク、はたまた自社ネタで〝誤報〟を犯したかと思ったが、失礼ながら大マジメな話だった。

編集局長が自ら企画

 今回の企画を立ち上げたのは平鍋幸治・東スポ取締役編集局長。大の阪神ファンで目下、ペナントレースの行方が気になって仕方ない身だが、餃子販売の話になると態度は激変。〝言い分〟を聞いてみた。

 「まず、コロナ禍で世の中全体が意気消沈してます。で、これまで東スポは紙面で読者を元気にしてきましたが、今はもうそれだけじゃ足りない。元々、元気の源はやはり〝食〟で、おいしいものを食べたら元気になるし、幸せな気分になる。だからスタミナ満点でおいしい餃子を作って売ろうと思いついたんですよ(笑)

 1日汗かいて働いて仕事終わりに東スポ買って競馬の予想したり、記事を読んで笑ったりとそんなサラリーマンの情景を想像したらビールに餃子が一番!と自然に思い浮かんだというわけです(笑)」

 さらに話は熱くなり「みなさん、新聞社が餃子を売るなんてけしからん、ふざけるなと思う人がいるかもしれませんが、こっちは本気です!餃子を売ってる新聞社、実に東スポらしいと自負しています!誰もどこもやってないことをやる! 紙、ウェブだけでやっていける時代でもないんです!」と力説。

 そして「餃子は試行錯誤を繰り返して作りました。味には絶対の自信があります!年商1億円、本気です!ぜひお買い求めください!」。最後は火が出てくるのではと思うくらいの鼻息の荒さ。そのまま餃子も焼けそうな迫力だった。

国産の豚・野菜、青森産にんにくを使用

 今回注目の「東スポ餃子」は平鍋編集局長の言葉通り、餃子の本場である栃木県・宇都宮市を本拠とする「大和フーズ株式会社」とタッグを組んで開発。その中身は国産の豚、国産の野菜に高級素材の青森県産にんにくを通常の3倍も加えた〝マシマシ餃子〟だ。

 東京都内など飲食店に向けた業務用50個入りセット(税込み2484円)のみで販売を開始したが、年内には「ドン・キホーテ」などで一般小売り販売も予定しているという。

 気になるのは味の方だが、東スポは1日に東京・江東区の本社でこれまた前代未聞の「大試食会」を開催。参加したプロレスラー、〝ミス東スポ〟らグラビアアイドルからは「忖度なくうまい!にんにく3倍と聞いて大丈夫かなと思ったけど、においも残らない」「すごくジューシー。すぐに、にんにくの香りが口いっぱいに広がります。ガツンとパンチがありながら優しい甘さも広がります」など大好評だったそうだが、これ、決して〝仕込み〟の話ではない。

大和フーズ会長、「面白い」から「おいしい」へ

 東スポとタッグを組んだ大和フーズ株式会社の横井浩一会長によると「最初はどこも『東スポ餃子、面白いね』の反応なんですが、実際食べてもらうとおいしい!に変わる。販売開始から1週間ほどでラーメン店、そば店、すし店までもが購入してもらっている」とか。

 餃子の本場・宇都宮市の居酒屋店など〝プロの連中〟に早々、認められたのはうれしい限りだ。さっそく東スポはこの話を聞きつけて「アポなし出張取材」を店側に敢行し、ウソや大げさではなかったことを6日発行の終面記事で堂々リポートしている。

経営面で〝苦境〟多くの社員が去った

 現在、東スポは経営面で〝苦境〟に立たされている。すでに九州にあった編集局を大阪の編集局に統合するなど合理化をまい進。「文春砲」でも報じられた通り、今年6月には初の希望退職者を募り、筆者を含め、多くの社員が去っていった。

 そんな中でも東スポは持ち前の明るさで前に進んでいくしかないが、1960年創刊以来、型破りな紙面を展開してきたように、「東スポ餃子」もまた型破りな〝挑戦〟の一つ。異色のヒット商品となるか、東スポOBとしても〝興味マシマシ〟で見守っていきたい。

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