家どこ?って言われて神戸の方とかいうぐらいやったら、神戸に住んだ方がええな-。神戸市が9月上旬、JR明石駅(兵庫県明石市)に掲示した移住促進ポスターが物議を醸している。明石市民をやゆするような内容がインターネットで話題に。人口の増減や子育て施策で比較される両市だけに、神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」にも、神戸市の手法に疑問を持つ反響が届いた。同市の担当者を取材した。(初鹿野俊)
話題のポスターは、若年・子育て世帯に神戸への住み替えを促すため、市の補助金をPRする広告。9月上旬から1週間、兵庫県内の主要21駅に張り出した。昨年度はイラストをメインにしたポスターを各駅に掲出したが宣伝効果が薄く、今年は「くすっと笑える」内容を目指し、職員と広告会社で考えたという。
駅ごとにフレーズは異なるが、JR明石駅が最も「尖(とが)った」内容に見える。ネット上でも「喧嘩(けんか)売りすぎてる」「神戸の焦りを感じる」といった反応が瞬く間に広がった。
盛り上がりの背景には、神戸市と明石市のこれまでの経緯が関係していそうだ。近年人口減少に歯止めがかからない神戸と、増加が続く明石。昨年は神戸から転出が最も多い県内自治体が明石だった。待機児童対策では、保育人材確保の一時金支給額で「抜きつ抜かれつ」を繰り返し、現在は神戸の方が上回っている。
明石駅のポスターの意図について、神戸市建築住宅局政策課の担当者は「過去の経緯を意識したわけではない」と釈明。住宅購入を検討する明石市民の心の声を表現しながら補助金を宣伝する狙いだったといい、「ばかにされたと気を悪くされた方には、本当に申し訳ない」と陳謝する。
ネット上では、注目された後にポスターが外されたことに「ネット炎上で撤去に追い込まれたのでは」との見方も広がったが、「掲出期間が終了したためで、誤解です」と打ち消した。
その上で「多くの方に話題にしてもらえたのは成功だが、反省点もあり、複雑。今後も情報発信の在り方を考えていきたい」と話していた。
ちなみに、担当者さんのお住まいは?
「神戸の方です」
◇ ◇
「神戸の方、使ったことある」
JR明石駅に張り出された神戸市のポスターについて、「スクープラボ」に意見を寄せた兵庫県播磨町の男性(45)に話を聞いた。
男性は神戸市内の病院で生まれた後、明石市で育ち、約30年暮らした。大阪府内の大学に通った学生時代、友人に地元を説明する際「『神戸の方』と使ったことがある」と笑う。「ちょっとええ格好したいのと、大阪の人には当時『明石』では伝わらなかったから」だという。
そうした経験もあり、今回のポスターに一定の理解を示す一方で、「惨めな印象。最近、神戸は明石を意識し過ぎでは」とみる。
同級生たちとも話題になったといい、「みんな明石に誇りを持っている。本気で怒る人はいないけど、見て良い気分ではない」。神戸市に対しては「神戸らしくシュッとした宣伝をしてほしい」と注文を付けた。
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