猫10匹を置き去りにし飼い主が引っ越し…室内は“ごみ屋敷” ひどい悪臭と暑さの中、ボランティアが保護し里親募る

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「近隣に猫十数匹を置いたまま家主がいなくなった家がある。今はドアの隙間から手を入れて餌と水を入れているが、8月いっぱいで業者による片付けが入ってしまう…」

地域で餌やりをしている女性から8月18日、そんなSOSの連絡を受けたという、「ハピネスねこ譲渡会」(埼玉県)の代表・海老塚貴子さん。翌日、猫たちが置き去りになった現場に連絡をもらった女性や地元の自治会役員とともに足を運びました。

家のドアは鍵が掛かっておらず20センチほど開いた状態で、中に入ることになったといいます。

「ドアの中に顔を入れると目にしみるほどのひどい悪臭と暑さでした。さらに奥へ進んだところ、部屋の中にはごみが積み上げられていて、物も散乱。大量のハエやウジもいて、とても靴を脱いであがれるような状態ではありませんでした。そのうえ、電気が通っていなかったので室内はすごく暑かったです。また、私たちが入るとよだれを垂らしながら猫が数匹寄ってきて・・・ご飯をねだっているようでしたので、ご飯を器に入れてあげると必死に食べ始めました」

 

7日間にわたる保護活動、置き去りの猫たちは威嚇することもなく見つめていた

あまりにもひどい環境で過ごしていた猫たちを目の当たりにした海老塚さん。その家の管理会社などに連絡を入れ、すぐに保護に乗り出すことになったそうです。

「連日7日間にわたり、10匹の猫を保護しました。ごみが放置されていたので室内は不潔で、猫たちの毛並みは悪く…私が入った際には、猫たちは全く威嚇することもなく、ただ私の動きを不思議そうに見つめていました。5歳前後の子がほとんどで、歯もボロボロ、口内炎のひどい子も。一番長老と思われる猫の頭にはこぶがあって、ガンの可能性があります。また、去勢避妊手術をしている子もいればしていない子もいました」

ボロボロになりながらも生き延びていた10匹の猫たち…しかし、室内には1匹の猫が死んでいました。死因は餓死のようで、ガリガリにやせ細っていたとのこと。その猫の死骸は警察に引き取ってもらったといいます。

夫を亡くした年配の女性が猫と一緒に暮らしていた お気に入りの猫だけ連れ去った…

この家に住んでいたのは、年配の夫婦でした。近所の人によると、2年ほど前、ご主人が亡くなってからは奥さんが一人で暮らし、猫の世話をしていたそうです。

「猫を保護した際に室内で2つのカレンダーを見つけたのですが、どちらも2020年の9月のままでした。ご主人が亡くなってから奥さんは少しずつ気持ちに余裕がなくなっていったのではないかと伺い知れます。奥さんは、7月の半ばにいなくなったと聞きました。ほとんどの荷物を置きっぱなしにしたまま別の場所に引っ越したようです。顔見知りだったという餌やりの女性が、家の異変に気が付いて置き去りの猫たちを発見したんです。餌やお水を運んでくれていたので、かろうじて10匹は生きていたのかもしれません」

ただ8月初旬、一度だけ奥さんが家に戻ってきたところを、餌やりの女性が声を掛けることができました。そのとき、キャリーを持っていたという奥さん。家から出てくると、キャリーには1匹の猫だけ入っており、お気に入りの猫だけを連れて行こうとしていたようでした。

そんな身勝手な行動に「他の猫も連れて行かなきゃ死んじゃうよ。なんでこの1匹だけなの? 他の猫も連れて行かないとダメだよ」と餌やりの女性が呼び止めたといいますが、「はあ、すみません」と言い捨てて逃げるようにその場を立ち去ったそうです。それ以降一度も見掛けることはなかったといいます。

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ペットを飼育放棄した飼い主「次こそは幸せにします」と身勝手な発言も

これまで犬や猫などのペットを飼い主が置き去りにする事案に何度も直面してきたという海老塚さん。過去にも飼い主の身勝手な行動に怒りを覚えたことがあるといいます。

「複数の猫を飼っていた方がその子たちをアパートに閉じ込めていたんです。死んだ子を、生きいていた子が食べていました…。飼い主さんと連絡が取れた際に、お話すると生き残った子を引き取って『今度はきちんと飼います』と言っていました。

何度か犬や猫を置き去りにした当事者とお話をしたことがありますが、そういう方の中には生き残った子を『次こそは幸せにするのでもう一度チャンスをください』なんておっしゃる方もいて。自分が放っておきながら、そんなことが言えるのか私には理解できませんし、当然元の飼い主に戻すことはないですね」

今回の猫を置き去りにした家主の奥さんについても「ご主人が亡くなってから、飼っているペットがしだいに『面倒臭いもの』になってきたのではないかと感じます。そこから逃げたかったのでしょうね。一度様子を見に来たりするのは猫が心配というより『さて、どうなっているか』といった感じだと思います。死んでくれていたら、と心のどこかで思っていたのでは…そういう方を何人も見てきました」

また、置き去りになった猫の保護をする際には、海老塚さんのお子さんもお手伝いされたそうです。そのときのことを、お子さんはこう話してくれました。

「お母さんたちに『すごい臭いよ』と言われたけれど、家の中に猫ちゃんがいると思ったから助けてあげたいと思いました。すごく暑かったけど猫ちゃんがいると思ったから頑張れました。暑くて汚いところに猫ちゃんたちを置いていった人は本当にひどいと思います」

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保護された猫たちは里親を募集しています。問い合わせは「ハピネスねこ譲渡会」HPの問い合わせフォームから(https://www.happiness4allcats.org/contact)あるいは、メール(tacapoo211.lobster@gmail.com)まで。また、東武スカイツリーライン「獨協大学駅」西口にて毎週土曜日、猫の譲渡会を開催(夏期、荒天中止)しています。

 ■「ハピネスねこ譲渡会」HP https://www.happiness4allcats.org/

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