昨年6月に惜しまれながら閉店したが、今年2月にファンの声や企業の後押しで劇的な復活を遂げた神戸の老舗餃子店「ひょうたん」。再開後、実は着々と店舗を増やし続けている。元町店、三宮店というおなじみの2店舗に加え、新たに三宮の商業ビル「さんプラザ」、東山商店街、板宿本通商店街に順次オープン(東山は持ち帰り専門)。10月13日には、ミント神戸地下の飲食店街に6店目が誕生する予定だ。どうしてそんなに増えているのか。
ひょうたんは1957(昭和32)年の創業以来、八丁味噌ベースの味噌だれで食べる“神戸餃子”の代表的な存在として、地元を中心に多くの人から愛されてきた。餃子製造責任者の高齢化や機械の老朽化を理由とする昨年の電撃的な閉店を受け、飲食店の経営を手掛けるZIPANGU社(大阪市)が「神戸からひょうたんをなくしてはいけない」と支援に名乗り。わずか8カ月で再オープンに漕ぎ着け、ファンを喜ばせたことは記憶に新しい。
再開に際しては、残されたレシピを基に試行錯誤を重ね、半世紀以上受け継がれてきた味を忠実に再現。一方、神戸の中心部である三宮・元町界隈でしか味わえないある種の希少性もひょうたんの魅力だったが、経営に参画した同社は「味や雰囲気を守りながら、これからは『神戸の味』として広く発信する」との方針を打ち出す。家族経営的な体制を見直し、流通やPRを視野に入れた企業経営の側面を強化していくことになったらしい。
現在、餃子はセントラルキッチンで餡を皮に包むところまで調理し、各店舗に配送。焼き方にばらつきが出ないよう、スタッフの研修にも力を入れている。担当者は「ひょうたんは味噌だれ餃子という“神戸スタイル”を広めた老舗の代表格。まだまだ全国に浸透できるポテンシャルがある」と話し、今後さらに店舗数を拡大していく計画という。9月10日から30日には、期間限定でルクア大阪に出店。ポップアップストアの形だが、ひょうたんが県外に進出するのはこれが初めてだ。
創業者の孫で、元町店と三宮店の店長を務める長塚仁孝(よしたか)さんは「再開後に『味が変わった』と言われないよう頑張ってきた。ありがたいことに、最近は常連さんだけではなく、新しいお客さまにもたくさん来ていただけるようになりました」と話す。
「神戸の餃子」から「神戸“発”の餃子」へと大きく舵を切った新生ひょうたん。「神戸の新しい全国ブランドに育てたい」(同社)という遠大な野望は、果たして…?