知ってました?サラブレッドの馬ふんをいかした清酒白雪「勝利馬」が人気 お盆明けから再び販売

山本 智行 山本 智行

 サラブレッドの馬ふん堆肥で育てた米を使った清酒白雪「勝利馬(しょうりうま)」が酒造メーカーの「小西酒造」(兵庫県伊丹市)から発売され、話題になっている。2013年発売の「勝馬米」に続いて2回目だが、前作より芳醇でキレの良さが特長。6月分は完売したため、お盆明けから追加発売する。スターホースのいるJRA栗東トレーニングセンターから出された馬ふんを再利用したもの。きっと”ウマい”に違いない。

 またの名をウイニングホース。いかにも縁起の良さそうなネーミングの純米大吟醸「勝利馬」は、小西酒造が立命館大学や草津市にある一般社団法人「SOFIX農業推進機構」と田渕農場の協力を得て、共同開発したものだ。

 なかでも注目される点は、原料米の栽培に使われた堆肥がJRA栗東トレーニングセンターがある滋賀県の競走馬の有機堆肥を使って、つくられているところ。競走馬のふんはリンやカリウムのバランスが良く、さらに飼料などはドーピング検査で徹底管理しており、安心、安全でおいしい米づくりに最適だという。

 そもそもの始まりは2010年から立命館大学生命科学部の久保幹(もとき)教授らが考案した土壌診断技術「SOFIX(ソフィックス)」を使い、滋賀県の農家が有機米「勝馬米」を生産したことから。この取り組みに歩調を合わせていた小西酒造が2013年に、この米を使った「必勝の酒勝馬米」を販売。国内はもとより、香港やイタリアなど海外でも好評だったという。

 聞き慣れないSOFIXとは、土の中の微生物の数や動きを可視化・指標化することで土の質を診断する世界初の技術。これまで農家の経験とカンが頼りだった有機肥料を使った土づくりに、科学の目が入ることで農作物の品質や生産性がアップした。

 今回、第2弾となる「勝利馬」はA~Dまで5段階ある「SOFIX土壌認定」において、もちろんA評価を得た土をいかしており、原料米として草津市にある田渕農場の水田で栽培した高品質のコシヒカリを使用。小西酒造の開発担当者は「芳醇で、いわゆるボディ感がありながらキレの良さが特長」と自信を持って送り出す。

 その小西酒造と言えば天文19年(1550年)創業。「山は富士 酒は白雪」の名フレーズで知られ、企業スローガンは「誰も歩いていない道を行く。」だ。

 15代目の小西新右衛門社長は今回のチャレンジについて「お酒造りに適した山田錦を使うと癖のないスッキリしたお酒ができ、香りも出やすいが、コシヒカリだとそうもいかない。酒造技術が問われるが、冷やでも燗でも楽しめるように仕上がった」と話す。

 広報担当者によると「勝利馬」というネーミングには迷いがなかったようで「競走馬の馬有機堆肥を使用した原料米でお酒をつくったことと、縁起の良さから名づけました」という。

 ご存じの通り、栗東トレーニングセンターといえば”白毛のヒロイン”ソダシや三冠馬コントレイルなど2000頭が在籍。小西酒造としても、競走馬ゆかりの酒という話題性をいかし、競馬ファンや競馬場周辺の飲食店へのアピールはもとより、競馬が盛んな香港やオーストラリアへの輸出にも意欲を示す。

 もちろん、SOFIXの土壌診断を用いた有機栽培の広がりは、農地土壌劣化問題の改善にもつながるとの立場。「原料米などの農産物を、伝統産業である日本酒にすることで、農家の方々と共存共栄し、それによって環境に優しく、持続可能な農業の発展に寄与したい」と理想を掲げる。

 化学薬品などを使わない有機農法。どうやら清酒「勝利馬」をおいしくいただくことは、いわば社会貢献の一環でもあるようだ。ウマい上に、ウンまでつくかもしれない。

◇超特選 白雪純米大吟醸「勝利馬」(720ミリリットル)の価格は1本3850円(税込み)。
小西酒造のオンラインショップ https://choujugura.com/
商品ページ https://choujugura.com/SHOP/01361.html
で予約受付中。勝利の美酒に心底酔いたいときはぜひ、この1本を。

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