過去70年の8月の暑さを可視化したヒートマップがSNSで話題です。熱帯夜日数のデータは、寝苦しい夜が日本列島を北上していることを示しています。「平成の米騒動」と呼ばれた1993年夏がターニングポイントであることも一目瞭然。明らかに変貌した平成以降の夏。昭和の感覚、リセットが必要です。
マクドナルドとスターバックスの公開情報から見るコロナウイルスの拡大やコンビニの勢力分布など、データを可視化した話題をSNSに発表しているツイッターユーザーのにゃんこそば(@ShinagawaJP)さんが作成。
1950年~2020年の気象庁の8月気温データをもとに、熱帯夜(最低気温25度以上)の日数、真夏日(最高気温30度以上)の日数、最高気温33度以上の日数、猛暑日(最高気温35度以上)の日数の都道府県別ヒートマップ、1994年と2014年のエアコン普及率を日本地図に落とし込みました。
特に反響を呼んだのは、都道府県別の熱帯夜日数の推移です。ゼロを青に、日数が増えるにつれ、黄色、オレンジ色を経て濃い赤色になるという配色で表現したヒートマップで、セルの中に日数も表示しています。1964年の大阪、神戸から始まり、上下を繰り返しながら2010年からは北海道、東北、長野を除くエリアが寝付けない夜に覆われています。数年前までは山梨と奈良も東北レベルの少なさでした。「やっぱり関西って関東より暑い」「奈良が少ないのはなぜだ」「長野県すごい…流石は避暑地」などとツイッターユーザーが反応しています。
特筆すべきは1993年。沖縄を除く全国で、熱帯夜の日数がひとケタです。この年は、天候不順のため全国の作況指数(平年値が100)が74となり、1000万トンのコメ需要(当時)に対し、収穫量が740万トンと大幅に不足し、タイなどから緊急輸入しました。今でこそタイ料理店でカレーに合う米として知られるタイ米ですが、当時はあまり馴染みがなく、国産米と抱き合わせ販売されたタイ米が不法投棄されたり、家畜の飼料にされることも。また、タイ米を輸出したタイでは米価格が高騰し、貧困層に餓死者も出るなどして、日本でのタイ米大量放棄は非難されました。翌1994年は一転して記録的な猛暑に。以降、京都や大阪は厳しい猛暑の年が目立ちます。意外なのは沖縄。1952年以降の統計では、猛暑日の日数はゼロまたは1です。
見ているだけで汗ばむようなヒートマップを作成したにゃんこそばさんに聞きました。
―見どころ満載のマップや地図です
「東京五輪では暑さによる競技時間の変更などが話題になりましたが、朝の暑さはどうなんだろう?と思い立ってデータを集計・可視化してみました。北から南まで並べてみると、札幌や青森、また内陸で標高の高い長野で熱帯夜の少なさが目立ちます。時間帯別の気温が公開されている1990年以降のデータでは、朝8時の平均気温に東京・札幌で4.5度の差があるので、マラソン・競歩の開催地変更についてはある意味妥当だったのかもしれません。ただ、今年に限ると札幌の朝は東京並みに暑く、女子マラソンでは競技前夜にスタートの1時間繰り上げが決まるといったハプニングもありました」
―1993年の冷夏、翌年の記録的猛暑。ここがターニングポイントでしょうか
「1970年代から1993年ごろまでは冷夏の年も多く、『地球は寒冷化に向かう』といった主旨の本が多く出版されていたのを思い出しました。1994年にはラニーニャ現象により記録的な猛暑となりましたが、その後も熱帯夜が増える傾向にあります。特に、これまで比較的涼しかった奈良の"急変"を見ると、気温上昇がいよいよ後戻りできないところまで来てしまったのを感じます」
―「個人的には京都が一番過酷」というコメントもあるなど、関西がえぐいです。沖縄には8月猛暑日がほぼ皆無なんですね
「沖縄は海に囲まれているため、内陸と比べると日較差(一日の気温差)が小さくなります。その代わり、湿度や最低気温が高いので、"避暑"向きとはいえません。昼間は神戸、夜間は奈良のような気温の街があると住みやすそうですが、近畿圏ではなかなか見つからないかもしれませんね」
―もはや災害級の暑さといえそうです
「この30~40年で夜の暑さは格段に厳しくなりました。東京都福祉保健局の発表では、2019年6~9月の熱中症死亡者の30%が夜間に亡くなっているというデータもあります。自宅において健康を管理できるのは自分だけです。8月下旬にかけて猛暑が戻ってくるという予報も出ていますので、寝苦しい夜はエアコンを使うなど、工夫して乗り切っていきたいところです」
にゃんこそばさんのアカウントはこちら→https://twitter.com/ShinagawaJP