小田急線刺傷 自称・ナンパ師だった容疑者、事件の背景に「大学中退後のうっ屈」 小川泰平氏が解説

小川 泰平 小川 泰平

 小田急小田原線の乗客10人が6日夜に刺傷されるなどした事件で、川崎市の職業不詳・対馬悠介容疑者(36)が殺人未遂容疑で逮捕されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は9日、事件の現場を取材し、当サイトに対して「計画性はあるが短絡的な犯行」と指摘しつつ、学生時代の友人等から聞き出した対馬容疑者の素顔を明かした。

 対馬容疑者は6日午後8時半ごろ、登戸駅(川崎市)から10両編成の「快速急行」(新宿行き)6号車に乗り、成城学園前―祖師ケ谷大蔵間を走る車内で、7号車にいた女子大生(20)の背中や胸など7カ所を刃渡り20センチの牛刀で切り付け、8号車でサラダ油を床にまいてライターで着火しようとしたが火は付かず、9号車の非常用コックで開けられたドアから逃走。杉並区内のコンビニエンスストアで「私はニュースでやっている小田急線の事件の犯人だ」と名乗り、店員の通報で駆け付けた警察官に逮捕された。

 捜査関係者によると、対馬容疑者は6日昼、都内の食料品店で万引きを女性店員に通報されたことを逆恨みし、川崎市内の自宅に戻った後、店に引き返して同店員を殺害しようと考えたが、情報を調べて閉店していることを知り、電車での犯行に切り替え、包丁やサラダ油を持って乗り込んだと供述。「快速急行」では、乗車した登戸駅の次の停車駅が下北沢駅(東京都世田谷区)となり、10駅とばすことになる。同容疑者は「快速なら乗客が途中で降りられないから」と供述しているという。

 小川氏は「登戸駅から下北沢駅まで、駅員さんに確認すると10分~11分とのことですが、この時間の真ん中である5分くらいの地点で犯行に及んでいた。10両編成で約400人乗っていたということは、時間は夜8時頃で一車両当たり40人と、それほど混んでいる状態ではなかった。今回は10人が負傷したが、これが通勤時など混雑している時なら、さらに被害は大きかった」と指摘した。

 その上で、容疑者の心理状態について、小川氏は「牛刀やサラダ油を用意するなど犯行の計画性があった。火をつけようとした意志もあった。ただ、サラダ油には着火しないという知識がなかったのか、綿密な計画性はなかった。大学の理工学部にいたくらいですから、少し調べたら分かるはずです。また、本人が言うとおり、大勢の者にケガをさせようというのなら、夜8時半頃ではなく、通勤時間帯などを選ぶはず。本人は小田急線沿線に住んでいて、混んでいる時間帯も知っていたでしょう」と分析した。

 小川氏は「容疑者の供述には矛盾があり、『約6年前から幸せそうな女性を見ると殺したいと思うようになった』と言いながら、この6年間、そういった行動すら起こしていない」とした上で、万引きを通報されたことが電車での凶行の引き金になった可能性があることを指摘。同容疑者の友人、知人らの証言から、充実していたように見えた学生時代から一転、大学中退後は「女性に相手にされなくなった」ことから、うっ屈した日々を送っていたという。

 小川氏は「事件後の7日と8日に取材をして、学生時代、特に中学高校時代は、周囲の友人等によると、『モテていた』そうで、『頭も良く、学校でも人気者だった』とのことでした。それが大学中退後は、お付き合いする女性がいても、毎回のように相手からふられていたという話です。『ナンパ師』を自称し、『女性にモテていた』と豪語していた人間が、理由は分かりませんが、ある時からモテなくなり、相手にされなくなった。アルバイトをしても長続きしない。そこから自暴自棄になった可能性がある」と容疑者の犯行動機となった背景を指摘した。

 一方、電車内で凶器を持って無差別に攻撃してくる者への対処法について、小川氏は「カバンを自分の前で盾の代わりにして持ち、致命傷となる顔や首、胸、腹などを防御しながら、後ろに下がることです。背中を見せて逃げるのは危険です。また、車両から外に逃げると、対向車両にはねられるなどの二次災害の可能性もあるので、車掌や駅員の指示に従って行動することです」と説明。さらに「JRや私鉄側の人には『車内には防犯カメラがあり作動中である。不審者を見つけたら通報してください』等といったアナウンスをお願いしたい。抑止力になると思います」と呼びかけた。

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