野村麻純を救ったのは母の一言 コンプレックスだった笑顔、30代で心機一転「自分らしくいていい」

石井 隼人 石井 隼人

今年公開の2作品で相反する表情の演技を見せてキラッと光るのが、デビュー10年目の野村麻純(30)。突然の悲劇に巻き込まれて苦悩を抱える女性役の『空白』(9月23日公開)では笑顔封印。金髪姿のオシャレなスタイリスト役の映画『POP!』(12月公開)では笑顔解禁。ムロツヨシと共演した昨年放送の商品CMで見せた笑顔が魅力的な人で、総じて天真爛漫な役どころが多い。かつて「自分の笑顔に対する自己嫌悪があった」という野村だが、2021年はそのコンプレックスを逆手に躍進の年にする構えだ。

古田新太と松坂桃李が主演する『空白』では、自分の起こしてしまった事への罪悪感にさいなまれる役どころ。「これまでは明るく元気にはじけるような演技を要求されることが多かったので、『空白』ではいかに抑えた芝居を見せるかをテーマにしました。大変でしたがありがたい挑戦でした」と実感を込める。

呆然自失で事情聴取に応じる野村の姿は、痛々しすぎるほど真に迫っている。シナリオ上では「取り調べを受けている」という、たった一行の説明だけだったが「画には映っていませんが、机の下にある両手には手錠がかけられています。感情を放出する準備は沢山しましたが、手錠という小道具のお陰で一気にスイッチが入りました。本番の声がかかった瞬間に感情の高ぶりを表現することができました」と手応えがある。

笑顔封印の重苦しい表情から一転、『POP!』ではひょうひょうとした、どこにでもいそうな“おねえさん像”をナチュラルに表現。同作はMOOSIC LAB [JOINT]2020-2021でグランプリ&最優秀⼥優賞を獲得するなど一定の評価を得ている。「監督からオーダーを受けて金髪で衣装合わせに臨んだら、『役のイメージそのもの!』と太鼓判をいただきました(笑)」と役作りはバッチリ。

デビュー作となった宮藤官九郎脚本の連続ドラマ『11人もいる!』(2011年)でも金髪役だった。「いまだに『11人もいる!』での印象を話してくれる方も多いので、そういった意味で『POP!』はクドカンさんファンの方々にも注目していただけたら嬉しいです」と無邪気に笑う。

笑顔コンプレックスのきっかけとは?

その笑顔、とても魅力的。『POP!』での人柄の良さを感じさせるスタイリストの実在感は、野村の明るいイメージがあってこそ。しかし野村本人には、笑顔をコンプレックスに感じていた時代があったという。それはデビュー当時に人から「綺麗な笑顔ではないね」と言われたことがきっかけだ。「私の場合は笑うと目がなくなるというか、顔全体がくしゃっとなる。デビュー当初はカッコいい女性に対する憧れが強かったので、カメラの前では意識的に笑わないようにしていました。自信がない時に笑ってごまかす癖もあったので、自分の笑顔に対する自己嫌悪がありました」と打ち明ける。

「20代の頃は結構しんどかったです。自分の欠点や粗探しばかりして、他人と比べて落ち込んで。私なんか…のネガティブな自問自答の繰り返しでした」。本人はコンプレックスに感じていても、与えられる役は笑顔の多い明るい役どころ。満面の笑みが野村にとって最大の武器であり魅力であることを、本人が一番知らなかったことになる。

風向きが変わったのは、昨年放送された2本の商品CMで見せた満開の笑顔。「放映後には『笑顔がいい!』という反響を沢山いただきました。正直なところ撮影中も『こんなに笑っていいのかな?』という葛藤があったので、周りの反応は意外でした」と驚く。

ネガティブの根源となった言葉を打ち消してくれたのは、放映されたCMを見た母親の一言。「本来の麻純らしさが出ていてとても良かった」と野村の笑顔を褒めてくれたという。「自分らしくいていい、恥ずかしがらずに思い切り笑顔を出してもいい、と思えた一言でした。20代の頃は明るい役や笑顔を求められると後ろめたい気持ちもありましたが、今では明るい役どころも苦ではなくなりました」と30代で心機一転。

シリアスとファニーの相反する変貌ぶりを見ることができる2021年。「明るく楽しく元気!だけでは芝居の幅も広がらないと思うので、自分の内側から出る悲しみを放出するような役にも挑んでいきたい。笑顔を武器にしつつ、色々な顔を持つ役者を目指していきたいです」。チャームポイントの笑顔を見せながら、野村は10年目の飛躍を誓っている。

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