お父さんが病気になって、会社を退職…。大変な出来事ですが、猫にとっては嬉しいこと。埼玉県のA家のグレコちゃんも一日中お父さんがいてくれるようになって、とても喜んだ1匹です。
一日中お父さんにベッタリ。けど、クーラーの効いた部屋は嫌い。クーラーのない部屋に移動です。そこにいると、お父さんが迎えに来てくれるから。だから待っているというのもあるんです。
「こーら、グレコ」
と言いながら、お父さんがグレコちゃんを抱っこ。それからクーラーの部屋へ一緒に行きます。この時、グレコちゃんはゴロゴロ喉を鳴らしているんですよ。
お父さんがかかった病気は、リウマチ系の難病。体中が痛くてたまりません。それでも、グレコちゃんがいてくれるおかげでリラックスして、病と向き合えます。
ただ心配なのが生活費です。それまでタクシードライバーで頑張っていたお父さんの収入がなくなってしまいました。でもご安心を。それまでの蓄え等でなんとか暮らしていけるんです。お金の心配はありません。
実はグレコちゃんが家に迎えられてから、徐々に生活が上向きになっていったんです。お金持ちではないけれど、貧乏ではなくなったんですって。
あれは、忘れもしない14年前のこと。同僚から一本の電話がありました。それは、家の前に猫が捨てられているというもの。お父さんは急いで同僚の家に向かいました。そこで出会ったのが、生後約1カ月のグレコちゃんです。兄弟と段ボール箱に入れられて捨てられていました。
残念なことに、グレコちゃんのお兄ちゃんは絶命していたそうです。お父さんは2匹一緒に引き取る予定だったので、とても悲しかった。お兄ちゃんの分まで可愛がろう、そう思いました。
A家の一員になったグレコちゃんは、お父さんに大事大事に可愛がられます。大切にされているのはグレコちゃんも分かりますから、お父さんを困らせるようなことはしません。全然手がかからない子だったと、お父さんはグレコちゃんの子猫時代を振り返ってそう言います。
グレコちゃんがA家に迎えられてから、お父さんの仕事は絶好調!毎晩の晩酌も豪華になります。グレコちゃんを隣に座らせて、お刺身やら焼き魚やらをつまみにお酒をガブガブ。猫が好きなものばかりですが、グレコちゃんは一度も口にしようとしたことはありません。とても口が綺麗な子なのです。
とても幸せな日々が続いていたのですが、グレコちゃん8歳の時にお父さんの病気が発覚。産業医から、営業運転はさせられないと宣告されます。目の前が真っ暗になったお父さんを慰めたのは、やはりグレコちゃんでした。今まで以上にお父さんに寄り添うになったのです。
お父さんはどれだけグレコちゃんに励まされたでしょう。この子のために沈んでいるばかりではいけないと、気持ちを切り替えました。財産を整理して生活が成り立つように計算し、これからのことに目を向け始めたのです。グレコちゃんはお父さんのそばで、お父さんの新しい生活を応援しました。
そんなグレコちゃんの特技はハイタッチ。お父さんが手をかかげると、前脚をポンと付けるのです。称賛を分け合う挨拶のハイタッチを日々繰り返すことで、気持ちを前向きにさせます。
そんなお父さんがグレコちゃんに今思うことは、
「もう14歳だから、別れは近付いています。ちゃんと死に水は取ってあげたいです」
今はお酒で晩酌をしなくなったお父さん、麦茶を飲みながらグレコちゃんを優しく撫でました。グレコちゃんは目を細めながら、お父さんにおでこをスリスリ。これだけで、お父さんの人生は結果オーライなのだそうです。