「今年も船に乗られへんのんかー」天神様の声が聞こえてきそう コロナで規模縮小して行われた大阪・天神祭

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 日本三大祭の一つに数えられる、大阪天満宮の「天神祭」。例年、船渡御や奉納花火で大いに賑わいます。橋や道路から見物するひと、船の上からお祭を楽しむひと。約130万人の人々を動員すると言われています。しかし去年・2020年の天神祭は、新型コロナウイルスの蔓延をうけて渡御も花火も無し、神職と関係者だけで神事のみ執り行われました。そして今年も全体の陸渡御や船渡御は中止になりましたが、お祭の中心の御鳳輦だけ、距離を短縮して渡御が行われました。

そもそも「天神祭」って、なに?

 「渡御(とぎょ)」とか「御鳳輦(ごほうれん)」とか、最初からいきなり耳慣れない言葉で申し訳ありません。まず、「天神祭というのは一体どういうお祭なのか?」というところからご紹介したいと思います。

 天神祭というと毎年7月25日の夜、大阪の大川に船がたくさん出て花火が打ち上がるお祭、というイメージを持たれている方も多いかも知れません。あるいは単に「花火大会」と思われている方もいらっしゃるでしょう。

 元々のお祭の意味をざっくりというと「年に一回、天神さん(菅原道真公)が氏地の栄えてる様を見て回られる」ためのお祭です。

 これは同じ三大祭の一つ、京都の祇園祭とよく似ています。祇園祭も八坂神社の祭神たちが乗った御神輿が氏地を回るのが主役で、きらびやかな山鉾の巡行は祭を賑やかに盛り上げたり街々のお清めをしたりするため、といわれていますね。

例年の天神祭の様子は

 7月25日、昼からの本宮祭で、天神様は天満宮の奥から御鳳輦という車に乗り移られます。そしてその御鳳輦で天満宮の門を出られて、もともと参道だった道を西へ。御堂筋の角を南に曲がって、大阪市役所の北側の道を今度は東へ。そして天神橋の北詰までお渡りになります。これを「陸渡御(りくとぎょ)」と言います。

 そこから今度は船に乗られて(御鳳輦ごとクレーンで吊り上げて台船に載せる、という神事としてはなかなかダイナミックな展開です)、大川を北上、都島区の毛馬(けま)の手前で折り返して戻ってこられます。これを「船渡御(ふなとぎょ)」と言います。

 陸渡御の華々しい行列や、大川を埋め尽くす船、そして奉納花火などは、全てこの御鳳輦に乗られた天神様に賑やかに楽しんでいただくためのものなんですね。

 「天神祭の花火は意外と小さい」とよく言われますが、実はあの花火は2.5号玉と呼ばれる打ち上げ花火としては小さめの玉です。市街地の真ん中なのでそれ以上大きいのが上げられない、という事情があります。が、これは「花火大会」ではなくて「奉納花火」、つまり天神様にご覧いただくための花火なのでこれでいいのです。またそういう理由なので、花火の打ち上げタイミングも御鳳輦船が通られるときに特にたくさん打ち上がっているはずです。

来年こそ、いつもの天神祭を

 先に書いたとおり、2020年の天神祭は天満宮の中だけで、非公開の神事(式の様子はWebで配信されましたが)でした。今年は御鳳輦だけで、例年船に乗り込む場所までまっすぐに渡御して、そこで神事を執り行った後にまたすぐ天満宮まで戻ってこられる、という縮小した陸渡御が行われました。

 船渡御も奉納花火も無し(と言いつつ3分間のサプライズ花火が打ち上げられたようですが)の、2021年の天神祭。天神様もきっと「船に乗られへんのんかー」と残念がられたに違いありません。来年こそはコロナ禍を乗り越えて、いつも通りの天神祭が行われることを心から祈念いたします。

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