「入交」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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高知県の名字で、「いりまじり」と読む。高知県では比較的多いことと、地元に有名な企業があるため、高知県民ならごく当たり前に読むことができる。また、「入」を「いり」、「交」を「まじり」と読むのも別に特殊なものではないが、他県の人が初見でこれを「いりまじり」と読むのは難しい。
名字のルーツは、高知県南国市にあった土佐国長岡郡片山荘入交という地名。嵯峨源氏の一族がここに住んで入交を名乗ったという由緒ある名字だ。鎌倉時代に下向、のち香美郡田村荘王子(香南市)に移って、戦国時代には長宗我部氏に従っていた。
江戸時代は土佐藩の郷士となったが、18世紀に入交太三右衛門が高知城下に出て桜屋と号して商人に転じた。そして、城下近郊の長岡郡下田村(南国市)の石灰山を購入して良質の石灰製造に成功、幕末には藩の石灰御用を引き受けて豪商に成長した。さらに維新後には太蔵、太兵衛、太三郎の3兄弟が出ていずれも実業家として成功、入交産業(現在は入交グル―プ本社)を軸にした地方財閥を築いている。