「ジャガーにマタタビ」スリスリゴロにゃん止まらない!? ナゾ解明に全面協力した猛獣ネコたちが可愛すぎる!

茶良野 くま子 茶良野 くま子

 体をスリスリ、地面をゴロゴロ…「ネコにマタタビ」だから当然でしょ。…って、ネコはネコでも動物園のヒョウやジャガーじゃないですか!! そのとろけ具合はいつものカッコ良さがネコ被りだったかと疑うほど!? ネコのマタタビ反応は古くから知られることですが、未解明だった理由を探る実験に動物園の猛獣系ネコが全面協力。酔っ払って気持ちいいだけじゃない、とても実用的なワケがありました。

ヒョウもジャガーも?動物園全面協力!

 マタタビは落葉ツル性植物。ネコはマタタビを舐めたり、噛んだり、顔を擦り付け、ゴロゴロ転がるといった反応をします。生物の行動には必ず理由があるはずと、岩手大学農学部の宮崎雅雄教授、大学院生の上野山怜子さんらの研究チームは、マタタビの葉の抽出物を分離してネコに嗅がせ、どの成分に反応しているか詳細に調査したのです。その結果、反応している成分は「ネペタラクトール」という物質だと判明。

 では、大型ネコ科動物でも同じなのでしょうか?というわけで、白羽の矢が立ったのが大阪市の天王寺動物園と神戸市立王子動物園。王子動物園で2020年2月の休園日に行われた実験には、アムールヒョウ、ユキヒョウ、ジャガー、ボブキャット、オオヤマネコ、マヌルネコが参加しました。当時来園間もなかったアムールトラと、高齢だったライオン夫婦以外は全面協力です。

 ネペタラクトールを染み込ませた濾紙と、何もつけてない濾紙に対する反応をカメラで撮影したところ、アムールヒョウは部屋に入るなりネペタラクトール濾紙にロックオン。身体を擦り付け入念に塗り込むかのような動き。ふだんはカッコつけているのに、違うネコみたい。

 真っ黒なマッチョボディーのジャガーは、すぐに2つの濾紙を気にしていじり始めましたが、遊び道具のような扱い。最後にはネペタラクトール濾紙に体を擦りつけてクネクネ。オオヤマネコはもう「ネコでしかない反応」(笑)。大型ネコたちがマタタビ反応を示すことは動物園界でも知られてはいたものの、実際に目の前で見た飼育スタッフたちも、「大きくてもネコはネコ」「これが本能か」と感心したそう。

 一方、ユキヒョウとマヌルネコは全く反応なしだったそうです。なぜ?

マタタビは「多幸感」も

 研究では、マタタビ反応中のネコの脳内では多幸感に関わる神経系が活性化することも血液検査で判明。やはり、酔っ払って気持ちいいのも事実でした。

 人間に飼われている「イエネコ」とヒョウやジャガーのような大型ネコ科動物は約1000万年前に生物種が分かれそれぞれ独自に進化しています。このことから、宮崎教授らはマタタビ反応はネコ科動物の祖先が獲得したもので、重要な役割が引き継がれていると推測。ネペタラクトールに反応するネコやネコ科動物の様子をよく観察したところ、顔や頭に擦り付けるための行動だと分かりました。

 さらに、なんとネペタラクトールを体に塗ったネコは蚊にさされにくくなり、蚊除けや殺虫効果があることも突き止めた研究チーム。マタタビ反応は、フィラリアなどの寄生虫やウイルスなどを媒介する蚊から身を守るためだった、との結論に至り、今年初め、その研究論文を発表しました。

反応しなかったユキヒョウ、まさかの「判定不能」は…

  そこで気になるのが、なぜユキヒョウとマヌルネコは無関心だったのか…という点ですが、これについて上野山さんは「どちらも野生では高地や岩場など湿気が少ないところに棲むため、蚊があまりいないような環境で、蚊を避ける必要がないためと推測されます」と推測。「調べる個体数が増えればマタタビ反応を見せる個体もいるかもしれません」と話します。

 そして…なんとボブキャットは、まさかの「判定不能」。マタタビうんぬんより、濾紙2種類ともおもちゃにしてかなり弾けて遊んでいたそう。宮崎教授は、「かなりやんちゃな感じでしたね(笑)。そもそもマタタビに反応するのはネコの7割で、遺伝的に決まっているんです。性差はありません」とのこと。長年動物を見続けている王子動物園の獣医さんも「まさか蚊よけだったとは…」と驚いたそうですが、この研究のおかげで、そのうち、ネコと人間が共用できる新しい虫除けができるかも。

ゴロゴロと喉を鳴らしてご挨拶、ワクチン接種も!

 それにしても、遠い祖先は同じだったネコと、動物園の大型ネコ科動物たち。大きさは違えど「やっぱりネコ」と思わせる表情や仕草に見る側は癒やされ、ついかわいいかわいいを連呼。王子動物園では公式ツイートが、ジャガーやユキヒョウのペアの仲良しぶりを発信。あまりの「リア充」ぶりに多幸感上がりまくりのコメントが連なっています。

 飼育スタッフもそこは同じで、「仲良くしている様子を見るとうれしくなります」。また、「メスのアムールトラやアムールヒョウは喉をならしたり床や壁に頭を擦り付けてゴロゴロとあいさつしたり、特に発情期は甘えてきますね。離れたところにいてもずっと気にしてじーっと見てきたりします」と、何ともうらやましい関係を教えてくれました。

 ちなみに人間界で今話題のワクチンですが、動物園の大型ネコたちは実は毎年「ワクチン休暇」があり、伝染病予防のためのワクチン接種を受け、同時に健康診断も受けています。ネコ科動物への新型コロナウイルス感染も懸念される中、王子動物園では、緊急事態宣言に伴う約2カ月の臨時閉園明けから、観覧規制を強化。通気口がある場所は特に立入禁止措置を徹底し、注意喚起の掲示も増やしています。

 生息する場所も環境も違うさまざまなネコ科動物たちが、気持ちよさそうにゴロゴロできる裏には、あまり目に触れることはないけれど、確かで地道な健康維持体制があったのですね。

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