1961年まで京都市内を走行していた旧市電車両が、大阪府交野市で意外な施設に生まれ変わった。霊園内にある電車型の法要施設だ。京都市から譲渡を受けた運営企業は、「墓離れが進む今だからこそ、子どもたちの記憶に残る場所にしたい」と願いを込める。
移設されたのは「N電」と呼ばれ、鉄道ファンにも人気の車両。1912年に製造され、61年まで北野線(北野-京都駅)を走行した。廃車後に大覚寺(右京区)で保存された後、半世紀近く大宮交通公園(北区)で展示されていた。
同公園の再整備に伴って市が譲渡希望者を募ったところ、霊園開発・墓石販売業の西鶴(交野市)が応募。昨年に同社の「ハピネスパーク交野霊園」に移設され、改修工事が始まった。
譲渡時は木製の車両全体が朽ち果ててシロアリに食われた状態だったことから、壁や床、座席を張り替える大がかりな改修工事を実施。京都市電の歴史を伝える貴重な車両であることから、往時の姿に可能な限り近づけたという。
完成後の4月からは、墓参りに訪れた家族の休憩場所や、納骨の前にお経を読む場として活用されるようになった。一般にも開放されており、車両目当てに訪れる市電ファンもいるという。
同社の山本一郎社長(54)は「京都からせっかく預かった“命”。さまざまな人の思いを乗せ、長く親しまれる施設にしたい」と語っている。