あなたには友達が何人いますか? 友達がたくさんいる人は「社交性がある」「明るい」「きっとみんなに好かれる性格なんだろう」とポジティブに受け止められることが多いようです。しかし、本当に友達の輪が広い人ほど「信頼できる人認定」がされるのでしょうか?
友達の数って大事なことでしょうか。
友達付き合いに疲れ切ってしまった26歳の彼
26歳の男性と話していた時のことです。彼がこんなことをいいました。
「友達が多いことに悩んでいます」
大勢の友人に囲まれてきた彼。彼はいつも“他人の目に映る自分の姿”が気になっていたそうです。良い人と思われたい。誰からも嫌われたくない。みんなに好かれたい。だから常に愛想良くして、集団の中でもうまく立ち振る舞ってきたつもりだといいます。
おかげで彼にはたくさんの友達ができました。いじめを受けたこともありません。
ところが彼は次第に「友達が多いこと」が悩みの種になっていったというのです。
遊びにいかない?飲みにいかない?買い物に付き合ってくれない?ヒマなんだよね、どんな声がけにも彼は「もし断って嫌われたら」という思いが強く、ついつい付き合ってしまっていました。
一人ぼっちになるのが怖い
友達というと、この曲を思い出します。小学校に入学する時に歌う「一年生になったら」。その中に印象的な歌詞がありますね…「友達100人できるかな♪」。
友達は多いほうがいい。私達は、無意識にそう思ってきたのかもしれません。
いじめで、よくあるのが仲間外れです。
意図的ではなくても、グループ作りでどこからも声をかけてもらえなかったり、誰かとペアを組むのに最後まで残ってしまうと、とても辛く、屈辱的に思うことがあります。私達は、仲間というカタチに敏感です。
話を聞いた彼は「仲間に入れてもらえなかったらどうしよう」という意識が強かったのでしょう。一人ぼっちにならないように、ひたすらみんなに好かれようと振る舞ってきたのです。
「友達が多くて人気者」であるために頑張りすぎてしまう罠
しかし、それがずっと続き、高校大学、学生仲間のつながりに対して、自分がどう思われているかを気に病んでいたら、疲弊してくるのも当然といえば当然です。
うまく立ち振る舞っているようで振り回されている現実に、ある日、彼はふと気づいたそうです。
「だからもう、こういう自分をやめようと思っています」
仲間に囲まれた日々を過ごしてきた彼にとって、仲間から声がかからなくなるかもしれないことは怖かったことでしょう。
世の中には苦労せずにたくさんの友人と交流できる人もいます。
でも本当は苦手なのに、一人ぼっちが怖くて自分を押し殺して「明るくて友達思いで頼りがいのあるヤツ」をずっと続けていくのは大変なことです。
友達は「数より多様性」が幸せをもたらす
「数多くの交友をもつことよりも、多様な交友関係をもつことのほうが、生活満足を高める上で本質的な意義をもつ」という研究結果があります。
地域に、学校に、職場に、趣味つながりで、バラエティに富む「つながり」をもっている人のほうが幸福度が高いということでしょう。数が大切なのではありません。
たとえば自分が活動する場面、場所で、それぞれに話し相手となる人がいたら、いいと思いませんか?
会社に挨拶をして立ち話をする人がいる。ゲームつながりで遊ぶ友人がいる。学生時代からの昔の自分を知ってる知り合いがいる、立場が変わっても話せる人がいる。地元の友人とたまに飲んだりする。いきつけの居酒屋で顔見知りになった人と深い話をしたりする。
意外と周囲にいる自分とつながっている小さなコミュニティがあるかもしれません。実は思っている以上にあなたにもあるんです「多様性」が。
友達?そんなの友達じゃないよ!
「自分がひと声かければ100人集まる」と学生時代のサークル活動などで自慢げに話す若者が実際に心の中でどう思っているかはわかりません。
中には彼のように、ただただ友達の数を増やし、それが自分の価値を決めるように思えて次第に重圧となるケースも少なくはないような気がします。
いじめがあった時に、親と子供のやりとりでこういうシーンがあります。
「学校で友達からいじめられてるの。やめてといってもやめてくれない」
「友達からいじめられている?あなたが嫌がることをずっとするなんて、そんなの友達じゃないよ!」
友達ってなんだろう。彼の話を聞きながら、改めて考えたけど明確な答えが見つかりませんでした。
それでもひとついるのは、友達という関係性にこだわるあまりに自分を失うのは本末転倒だという点です。あなたと友達という関係、少し立ち止まって考えてみてもいいのかもしれません。
あなたには、あなたが考える、あなたにとっての友達が何人いますか?
◇ ◇
【出典】
松本直仁(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)
前野隆司(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)
どのような対人関係ネットワークが主観的幸福感に寄与するか?
JGSS-2003データに基づく対人関係ネットワーク構造に着目した分析
(https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/11406/2010matsumoto.pdf)