英国では、ワクチン接種が進んでも、感染が再拡大
ワクチン接種が進んでも、感染が再拡大する懸念もあります。
英国では、入院患者数や感染者数は数カ月間減少傾向でしたが、ここにきて英国のほぼ全域で上昇に転じ、特にイングランド北西部では感染拡大の兆しがみえています。4月には、新規感染者数を2000人程度まで減らしましたが、5月下旬より再び増加に転じ、6月8日には5400人となり、警戒を強めています。若い世代の入院も増えています。
英国政府は6月8日、新型コロナウイルスのデルタ株(インド型)の感染拡大阻止に向けた支援強化策を取ることを発表し、イングランド北部の一部地域では、軍を動員して住民の一斉検査を実施する等しています。これら地域やロンドン西部ハウンズロー区等では、不要不急の外出や家族以外との室内での交流が規制されました。
これまでロックダウンの段階的緩和を進めてきており、6月21日には規制を全面解除する計画でしたが、デルタ株の感染拡大に伴う今回の発表を受け、4週間後の7月19日まで先送りされる見通しです。
英国では5月半ばに、デルタ株の感染者数がアルファ株(英国型)を上回り、主流ウイルスとなりました。遺伝子研究機関ウェルカム・サンガー研究所が、5月29日までの2週間に約1万4000件のコロナウイルスをゲノム解析したところ、デルタ株が4分の3を占めていました。
デルタ株は、感染力が、従来株より1.78倍強い(※)といわれており、2週間後に規制が全面解除されればワクチン未接種者に感染が急拡大する可能性があると指摘されています。(英イングランド公衆衛生局(PHE)によると、デルタ株の入院リスクはアルファ株の2.6倍、集中治療が必要になるリスクは1.6倍に上ると示されています。(諸説あります。))
(※)北海道大学伊藤公人教授と京都大学西浦博教授らのグループによる(厚生労働省の専門家会議(6月9日)
英イングランド公衆衛生局(PHE)によると、英アストラゼネカ製または米ファイザー製のワクチンを1回だけ接種した場合の予防効果は、デルタ株の感染拡大後、33%にまで低下したが、2回接種した場合の効果は、アストラゼネカ製で60%、ファイザー製で88%になったとのことです。
したがって、変異株の感染がこれ以上拡大する前に、あるいは、さらなる変異が起こっていく前に、できるだけ早くワクチンを2回接種することが重要になってきており、これは、日本を含む他国においても、同様のことがいえます。