「接種が進んでも、感染が再拡大する懸念って?」ワクチンの疑問、お答えします<後編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

世界全体で収束させることが必要

6月11日から英国コーンウォールで始まったG7(主要先進国首脳会議)において、来年末までに新型コロナウイルスワクチン10億回分を低所得国に無償提供することで合意する見通しです。

ジョンソン英首相は、英国は少なくとも1億回分のワクチン余剰分を低所得国に提供すると表明し、バイデン米大統領も、低所得国向けにコロナワクチン5億回分を購入し、無条件で提供すると表明しています。

WHO等が主導するワクチンを公平に分配する国際的枠組みである「COVAXファシリティ」は、今年中に途上国の人口の30%にあたる18億回分のワクチンを供給する目標を掲げていて、必要な資金は83億ドルとされています。

日本は、COVAXに、これまでに2億ドルを拠出しており、6月2日の「ワクチン・サミット」で菅首相は、新たに8億ドルを追加で拠出することを表明し、これまでと合わせた日本の拠出額は10億ドルとなります。約3000回分のワクチンの現物を提供する方針も表明しています。

日本政府は、ファイザー製(1億9400万回分)、モデルナ製(5000万回分)に加えて、英アストラゼネカ製ワクチンを、1億2千万回分(6千万人分)確保していますが、アストラゼネカ製については、接種後に血栓症が極めてまれに起きると報告されていることから、使用を見合わせており、COVAXに提供する3000万回は、このアストラゼネカ製の国内生産分を想定しています。

(※)COVAXへの各国の拠出額(5月30日時点)

1位 アメリカ25億ドル、2位 ドイツ9億ドル、3位 イギリス7億ドル

昨年の新型コロナウイルス出現当初より申し上げていますが、世界全体で収束に向けて助け合わないと、新興感染症のパンデミックは終わりません。現代社会は、グローバル化が進み、航空網が発達し、ウイルスはたちまち世界中を駆け巡ります。途上国で感染対策が不十分でウイルスの変異や感染拡大を招くと、その影響は世界に及びます。

感染症対策における格差解消は、人道問題にとどまらず、保健衛生や経済の面での安全保障問題でもあります。

自分や自国を助けたければ、他者や他国を助けることが、必要になります。「国内の感染を抑える」「国民の社会経済活動を回復する」ことはもちろんなによりも大切ですが、それと同時に「世界全体で感染を抑える、そのために助け合う」こと、そのための実効性のあるアクションが、求められます。

【参考資料】
日本の新型コロナワクチン接種状況
ワクチン接種会場検索
世界の新型コロナウイルス感染状況
世界の新型コロナワクチン接種状況(2回接種完了した人の人口に占める割合)
集団免疫(米ファウチ博士インタビュー)
新型コロナワクチンについて(厚生労働省)
新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月9日)
変異株に対するワクチン予防効果(英イングランド公衆衛生局(PHE))
新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和3年6月12日版)
新型コロナウイルス感染症の患者等の発生について(空港検疫)(令和3年6月11日版)

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