バイクやボートを作っているヤマハ発動機が、羊毛フェルトで変わった作品を次々と発表しています。人気バイク・SR400の実物大ピストンやマスク、ラグビーボールなど…。コーポレートサイトにも「あみぐるみ・羊毛フェルト」というコンテンツがまとめられているほど。一体どういうことなのでしょう?
メーカーなので…「手に取って愛でる何かを提供できたら」
「あみぐるみ・羊毛フェルト」のコンテンツは2018年10月24日にスタートしました。制作協力・監修にあたったのは「一般社団法人 日本あみぐるみ協会」と「一般社団法人 日本羊毛フェルト協会」という専門家です。サイトでは無料でダウンロードできる作り方のレシピ(編み図・設計図)や動画を公開しているため、誰でもやろうと思えば作り上げることもできます。
さっそくコンテンツの仕掛人であるヤマハ発動機の三宅英典さんに話を伺ってみました。
―そもそも手芸を選んだのはどういう理由からでしょうか?
「手芸コンテンツを企画する前段階で、ほかにもいろいろなアイディアがあったのですが、手芸人口の多さや、インターネットとの相性の良さが決め手になって、最終的に手芸を選びました。あと、弊社はメーカーなので、実際の製品だけでなく、ネットを通してもファンの方々が、手に取って愛でる何かを提供できたら、という想いもあります。自分が作ったものだとしたら、さらに愛着が湧くと思います。この手芸コンテンツ、一見ふざけているように見えるかもしれませんが、実はスゴく真剣に考えてるんです!!」
「わけわからんけどかわいいな!」という反応に「嬉しい」
SR400といえば発売から40年以上経過してもいまだに人気のある単気筒エンジンのバイクですが、SR400のピストンも羊毛フェルトで作っています(注意:エンジンの中には組み込まないでください)。
―男性が好きそうなアイテムを手芸で作った反応はどうでしたか?
「『ヤマハがめちゃめちゃ攻めている』『わけわからんけどかわいいな!』…これ、2018年に手芸作品第一号のNIKEN(ナイケン)を発表した時のネットでの反応です。素材は柔らかいのですが、ガチで気合を入れて企画した甲斐あって、意図した通りの反応が多く見られて嬉しかったですね。以降、オートバイのピストン(実物大)やマリンジェット、電動スクーター、ラグビーボール(これも実物大)など、これまで手芸の作品にはあまり選ばれることがなかったものを多くモチーフにしています」
「バイク好きな夫・彼氏にプレゼントした」というコメントにほっこり
―なぜこんな変わったものをモチーフにしたのですか?
「自社の製品と事業活動に関係してるからですね。結果として少しマニアックになっているかもしれませんが、完成した作品を投稿してくれるファンの方々は圧倒的に女性が多いです。『バイク好きな夫・彼氏にプレゼントした』とか『手芸が趣味の自分に彼氏が教えてくれたので作ってみた』というコメントを見かけるとホッコリしますね」
―今後の展開を教えてください。
「新しい作品の企画を考える時に、いつも気を付けてるのは、カッコ良く言うと『差別化』です。ネットでいろいろと検索してみても、モチーフになるのは可愛らしい動物やキャラクター、人形なんかが多いと思います。手芸業界では新参者の弊社(業界入りしたわけではないですが……)が同じようなモチーフを選んでも、あまり意味がない気もしてますし、やるからには少しでも話題になってほしいと考えると、マニアックになってしまうんですね。ただ、そろそろネタが尽きそうです(笑)」
最新作は優れた空力特性を追求した?「YZF-R1Mマスク」
ヤマハ発動機のスーパースポーツバイクの「YZF-R1M」は、サーキット走行とレース参戦を主眼に開発された技術の粋を投入したモデルです。300km/h以上の走行を可能にするために優れた空力特性を持っています。
そんな「YZF-R1M」のフロントマスクを再現した人間用マスクの作り方も公開しています。ただしこのマスクを付けたからといって空気抵抗が少なくなるわけではなく、また抗ウイルス効果、飛沫拡散防止の効果を目的にしたものでもないため、実際に使う場合は不織布のマスクの上に装着するのがいいでしょう。
ヤマハ発動機ではInstagramの公式アカウント「yamaha_motor_handicraft」も設けていて、完成した手芸作品を投稿できます。フォロワーの海外比率が少しずつ増えていて海外でも「あみぐるみ・羊毛フェルト」が話題になっているそうです。コロナ禍の長引く巣ごもり生活で手芸を始めるのもいいかもしれませんね。