コロナ対策一辺倒の東京五輪、本当に開催して大丈夫か 「テロ」「抗議デモ」懸念される治安面のリスク

治安 太郎 治安 太郎

 東京五輪の開催を巡り、政治と市民の亀裂は深まるばかりだ。朝日新聞が5月半ばに行った最新の世論調査によると、回答者1500人あまりのうち、中止と答えた人が43%、再延期と答えた人が40%に上り、今夏開催反対が8割以上となった。新型コロナウイルスの感染拡大が依然として深刻な情勢が続き、医療界からも開催中止を求める声が日に日に強まっているが、政治の世界では中止の議論は既にほぼ消え去ったようだ。もうどうやって安全に開催するかに議論が移っており、引き戻しはできない状況だ。政治と市民の亀裂は深まり、菅政権の支持率は下降が止まらない。

 7月23日の開幕まで6月8日であと45日となったが、この時期になって感じるのは、開催を検討する上での議論が「コロナ一辺倒」になっているという点だ。

 現在の日本の感染状況を考えると当然の流れではあるが、五輪開催ということになれば検討事項は感染対策だけに限定されず、猛暑など天候問題、テロや抗議デモなどの治安問題も真剣に検討されなければならない。今はまさに「感染」と「五輪」という軸でしか報道されていないが、五輪が開催されるのであれば、治安に関する懸念などについてもしっかりと情報発信し、国民が十分な危機管理意識を持てる状況を作らないといけない。

 過去を振り返っても、五輪はタイミング的にテロに利用されてきた。過去には、1972年ミュンヘン五輪におけるパレスチナ武装勢力によるイスラエル選手団殺害、1988年のソウル五輪とラングーン事件や大韓航空機爆破事件、1996年のアトランタ五輪における五輪公園での爆弾事件などがある。

 今回の五輪では海外に由来するテロの可能性は低いと考えられるが、開幕が近づくにつれて大会の中止を求める市民が大幅に増加していることを考えると、反五輪を掲げる集団や個人による抗議デモが実行され、場合によっては治安当局との衝突に発展し、行動が過激化することが懸念される。現代日本では、そのような過激なデモや衝突は発生していないように映るが、1950年代や60年代、70年代など昔の日本では決して珍しくなかった。

 当然ながら、懸念材料はこれだけではない。最近も、東京五輪を強行すれば大規模なサイバーテロが起こるとして英メディアが報じたとされる。東京五輪を開催するとなれば、いくら感染対策で人々の動きを抑制したとしても、人流は必然的に活発化する。今一度、行政もメディアも市民も、心配されるさまざまなリスクに注意を払うべきであろう。

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