5月26日に「木で水滴を彫りました」という文言と共に投稿された、薄い長方形の板の上にこぼれた水滴の画像がSNSで注目を集めました、こちらのツイートは29日現在16.4万件ものいいねがつき…待って。「水滴」を「木」で彫りました…?この水滴は「水」ではなく「木」で浮き彫りされている…?そ、そんなことが可能だなんて…!!
木工技術の粋を極めた本作品に「意味が分からなくて拡大したけど意味分からんくらいリアル。そして何を言っているのかも意味が分からなくなってきた。」などと『凄すぎて理解できない』という趣旨のコメントが多数寄せられました。制作および投稿したのは、木工作家の福田亨(@TF_crafts)さん。
伝統装飾技法の木象嵌を、立体彫刻へ応用した「立体木象嵌」という、福田さんが独自で考案した技法で生み出される作品は、リアリズムと精巧な美しさを兼ね備え、これまでも多くの人を魅了しています。今回の大反響について「有り難いですし励みになります」という福田さんに、制作の経緯を伺いました。
――まず、なぜ「水滴」を「木」で彫ろう、と思われましたか?また本投稿のツリーで「ちなみにですが、作品としてはまだ未完です…。」とおっしゃっていますが…?
この作品はまだ未完成で、蝶の吸水シーンを作る予定で作ったものです。水を表現する事を先に決めていたので、いろんな案を出してった中で、水単体で水滴として表すことで水の美しさを出せるのではないかと考えたのでこのようなものを制作しました。仕上がりに関しては難しい部分もあったのですが、ひとまず主役は蝶なので、完成を見てみてどうかなというところです。
――ではいずれ、この美しい水滴の上に蝶がとまるのですね!今作は「周りの板を全体的に1.5mm程掘り下げて、水の部分を浮き彫りにしています。平面作りに一生懸命になりすぎて加工中の様子がないのですが、大工鑿と彫刻刀でおおよその平面を作っています」とのことですが、もっとも苦労した点と、最も上手くいった点についてぜひ教えていただけますか。
平面を精度良く出す(表現する)には、削りすぎる事なく削る他ないので、面の端も中央部も水滴の間の部分も全てか均一に彫られていなくてはいけません。彫りすぎて凹んだり、傷を深くつけてしまうと取り返しがつかないので、かなり慎重に削ります。また、木は繊維質なものなので、バリっと深く彫られてしまったりすることも無くはないです。そういったアクシデントを絶対に起こさないように緊張感のある作業でもあります。
――大変な神経の集中が、必要とされるのですね…。
また水滴部との際のところを綺麗にするのが難しいです。うまくいったかはわからないですが、やれる限りはやってみたという気持ちです。
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今後はどんな作品づくりを?と尋ねると「今後は今の延長なので、常にアイディアを模索しながら、今の課題と向き合ってレベルを上げていきたいです。納得のいくものを作れるよう精進したいです」(福田さん)という答えが返ってきました。これからも木工という表現の域そのものを拡げていくような作品を、ぜひその手で生み出していってほしいですね。