京都から消えた観光客、そのとき「食の老舗」は動いた 「助け合いの精神」の詰め合わせ

天草 愛理 天草 愛理

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、京都市内の老舗6社の名物商品をそろえた詰め合わせが人気を集めている。「おうちで京都気分。」という名前の通り、「京都の味」を自宅で手軽に楽しめるのが特徴だ。

 参加店は京菓子の「亀屋良長」(下京区、1803年創業)、日本茶の「一保堂茶舗」(中京区、1717年創業)、そばの「本家尾張屋」(中京区、1465年創業)、京湯葉の「千丸屋京湯葉」(中京区、1804年創業)、香辛料の「原了郭」(東山区、1703年創業)、味噌の「本田味噌本店」(上京区、1830年創業)。

 豪華なコラボレーションのきっかけは、昨春に全国に発令された緊急事態宣言だった。外出自粛が呼び掛けられると、京都のまちから観光客の姿が消えた。

 「ゴールデンウィークに京都旅行を企画していた人もいるはず。自宅で京都にいる気分を味わってもらいたい」。亀屋良長の企画担当者が各社の商品を箱に詰めた見本を試しに作り、リーフレットも作成した上で各社に商品化を働き掛けた。

 昨年の春から夏まで販売したところ、想像以上に好評だったことから、京都府に3度目の緊急事態宣言が発令された今年4月に第2弾を発売した。第1弾は5社だったが、今回は本田味噌本店が加わり、商品内容も一部変更した。

 亀屋良長は黒糖を使ったこしあんの玉に寒天をかけた代表銘菓「烏羽玉(うばたま)」と、食パンに載せて焼くとあんバタートーストのような風味を楽しめる人気商品「スライスようかん」をセレクトした。

 一保堂茶舗は日常遣いしやすく夏にぴったりな麦茶のティーバッグ、本家尾張屋は軽い食感でおやつに最適な「蕎麦(そば)ぼうる」を詰め合わせた。

 千丸屋京湯葉は炊き込みご飯などに使うと上品な味に仕上がるという乾燥湯葉とその活用レシピ、原了郭は豊かな風味が料理を引き立てる「黒七味」、本田味噌本店はお湯を注ぐだけで本格的なみそ汁ができあがる「一わんみそ汁」2種類をそれぞれ選んだ。

 亀屋良長の企画担当者によると、ゴールデンウィークや「母の日」に合わせて購入する人が多く、購入者から「帰省した気分になりました」「安心して義理の母に贈ることができました」といった声が届いているという。

 新型コロナ禍の影響で閑散とした時期もあったという亀屋良長。公式オンラインショップの充実に力を入れるなど、試行錯誤した1年だった。

 この間に新商品も誕生した。バナナようかんの上にカカオようかんをかけた商品は「そんなバナナ、」という老舗らしからぬ名前を付けた。「笑いは免疫力アップにいいそう。思わず笑ってしまうようなお菓子を作りたかった」と企画担当者は言う。

 老舗6社の詰め合わせも「こんなときだからこそできた、助け合いの精神から生まれたセット」(企画担当者)。朝食から昼食、おやつまで食卓を彩る品々が詰まっている。

 「京都に来たような雰囲気を味わってもらい、おうち時間を楽しんでもらいたいです。老舗には長く続く理由があります。ただでは転ばないというか、常にみんなで考えて乗り切っています」と企画担当者は力を込めた。

 詰め合わせは亀屋良長本店と公式オンラインショップで販売している。店舗は4374円、オンラインショップは5238円(送料込)。

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