「初めて飼うのに『触れない猫』でいいのですか?」それでも、この子に感じた運命 対面するだけで不思議と涙が

渡辺 陽 渡辺 陽

凪咲(なぎさ)ちゃん(1歳半・メス)は、2018年12月、神奈川県のマンションの敷地内に父猫(NTR)、祖母猫(あたる)、母猫(ハニー)、叔母さん猫(サニー)、兄猫(はく)と一緒に生活していたところをボランティアが保護した。家族で一緒にいたため、保護された当初は風邪もひいておらず、栄養状態も比較的よかった。保護された当初は激しく「シャー!」と威嚇していたそうだ。

神奈川県に住む及川さんは、猫を飼ったことがなかった。触ったこともなければ「可愛い」と思ったことすらなかった。しかし、2019年の夏ごろから急に猫のことばかり考えるようになった。大体、半年くらいずっと猫のことを考えていた。「猫飼い メリット デメリット」「猫 大変」などのキーワードで検索する日々。飼った経験がないので、何ひとつイメージが沸かない。途中、保護猫カフェに行ってみたが、そのカフェが臭くて不衛生だったため「猫を飼うとこうなるのか…」と感じた。それから3カ月ほど猫のことは考えないようにしていた。

そんな中、ふと出かけた旅先の旅館に猫がいた。三匹の猫が、代わる代わる部屋にやってくる不思議な旅館だった。これが衝撃的だった。家族の中に猫がいるだけでフワワワワ~~~と周辺の空気が暖かくなるのが分かり、とにかく癒されたという。

どうしてもこの子がいい!とにかくこの子がいい!

及川さんは、その日から再び猫のことばかり考えるようになり、翌週、家族で譲渡会に行った。里親の申し込みをしたが、あっさりと抽選に外れた。インターネット上で気に入った猫の里親に応募したり、都内の猫カフェに出向いたり。とにかく色んな猫に会った。どんな猫でも縁が繋がればいいと考えていたので、模様や年齢は関係なく探した。しかし、なかなか縁に恵まれない。そんな中、バチッと目が合ったのが凪咲ちゃんだった。

里親募集の掲示板。写真の凪咲ちゃんは、小顔で美人。すぐに、「この子がいい!」と申し出ると、「保護してから1年間うちにいますが、いまだに触れません。初めて猫を飼うのに触れない猫でいいのですか?」と聞かれた。

及川さんは、そこは別にどうでもよかった。そんなことより、どうしても「この子がいい」と思った。とにかくこの子がいい!と思うと、涙が出そうになった。

4月25日、実際に凪咲ちゃんと対面したら本当に泣けてきた。「こんなに可愛いのにどうして貰い手がなかったのですか?」と聞いたら、「真っ白とか真っ黒が人気で、どろぼう柄が人気ないからかなぁ?」と言われた。口元についている茶色い模様を、どろぼう柄というらしい。及川さんは、そこが猛烈にかわいいと思ったという。

半年後、大きな声で鳴くように

4月30日、ボランティアが凪咲ちゃんを連れてきてくれた。しばらくの間、いつもイカ耳で、特に体の大きな夫が近くを通ると激しく「シャー!」と威嚇した。ケージから出すと、ソファーの下に隠れる日々。1カ月くらいは家庭内野良状態だった。

半年くらい経つと、凪咲ちゃんは大きな声で「にゃーん」と鳴くようになった。基本「お腹がすいた!」と「もっとご飯ちょうだい!」ばかりだが、保護主のところでは声を出したことがないらしく、動画を送ったらかなり驚かれた。

 凪咲ちゃんを迎えてから、及川さんは落ち込むことがなくなった。

「そんなことより猫の写真を撮りたいんです。思春期の息子はかなりよく喋るようになり、家族全員精神的に救われていると思います」

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