和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と称された酒類販売会社元社長、野崎幸助さん=当時(77)=に2018年5月、多量の覚醒剤を摂取させて殺害したとして、元妻の須藤早貴容疑者(25)が和歌山県警に殺人と覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕、送検されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は1日、当サイトの取材に対し、現場で接した須藤容疑者の人物像や、本人が知人に明かした整形手術についての見解、さらには離婚を危惧していた可能性など、事件の背景について言及した。
須藤容疑者は18年5月24日、田辺市の野崎さん宅で致死量の覚醒剤を口から摂取させて死亡させた殺人と覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで今年4月28日に都内の自宅マンションで逮捕された。捜査関係者によると、須藤容疑者は事件前にインターネットで覚醒剤について検索し、SNSを通じて覚醒剤の密売人と田辺市内で接触していたという。
小川氏は事件発生当初から、現場となった田辺市の自宅周辺などでも取材を続けた。そこで、須藤容疑者に質問する機会もあったが、本人は一貫して無言だったという。
同氏は「現場では私が声をかけても、返事どころか振り向きもされなかったのですが、テレビでこの事件について発言したことに対して、弁護人を介して『言っていることが違う』という内容証明が来たこともありました。一部を除いて、大半のメディアに話をしていなかった須藤容疑者ですが、報道に関しては非常に細かくチェックしていて気にしていた」と明かした。
また、小川氏は「韓国で整形をしたという報道もありましたが、本人は親しい者に『これだけ自分の顔が売れてしまったので、整形でもしないとこれから生活できない。日本では無理。どこに行っても周囲に言われる』と話していたということです。きれいになるということだけではなく、周囲の目を気にして顔を変えるという、やむにやまれぬ事情と逃亡後のことも考えていたことがうかがえます」と須藤容疑者の心情を分析した。
須藤容疑者は野崎さんが経営する会社の社長に就任し、高額の報酬が口座に入ったという。都内では複数のマンションに移り住んでいたが、逮捕時は品川区在住だった。小川氏は「逮捕時の自宅は大崎方面にあるタワーマンションですが、真ん中より下の低層階で家賃は20数万円でした。また、都内で別の場所にもマンションを借りていたことがあり、事件発生時に野崎さんの自宅にあった和歌山ナンバーの高級外車が止まっているのを見かけて驚きました」と明かした。
その上で、小川氏は「須藤容疑者は結婚後も、都内のマンションと田辺市の野崎さん宅を行き来する生活で、田辺市の家に戻ってこない妻に対して野崎さんが離婚を切り出していたという報道もあるがそれは事実。実際に野崎幸助さんが弁護人に離婚の慰謝料について相談していた話も聞いている」と付け加えた。
小川氏は「離婚したら、財産も相続できなくなる。何かいい方法はないかとなると、これは推測ですが、『こういう方法で殺害するといい』などと教えられた…という可能性も否定できないのではないか。共犯関係か否かは別にしても、覚醒剤を含め、関与した人物がいても不思議ではないと思います。容疑者が単独の実行犯であったとしても、実際に犯行に至るには、とうてい1人ではできません。覚醒剤の入手を含め、その知識もそうですし。殺害に覚醒剤を使うという発想は、当時22歳の女性1人のものとは思えないです」と、改めて第三者の存在を予測した。