広島県立高校入試「机上にコンパス」で受験無効に…注意をしなかった試験監督側に問題はないのか

夜回り先生・水谷修/少数異見

水谷 修 水谷 修

 3月に行われた広島県立高校の一般入試で、複数の受験生が机上にコンパスを置いていたことを理由に「受験無効」とされたことが報じられた。「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は「広島県教委は、生徒たちの明日をつぶした」と指摘し、教員としての自らの体験を踏まえて、県教委や県知事に対応を訴えた。

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 今年3月8日に実施された広島県立高校の一般入試において、3限に実施された「数学」のテスト時、机の上に禁止されているコンパスが置かれていたという理由で、複数の生徒の受験が無効となり、その高校への進学ができなくなったと報道されました。

 しかも、それらの生徒たちは、1・2限時のテスト中にも、コンパスを机の上に置いていましたが、監督者から注意されることもなかったと報道されています。多分、その時間のテストは、「数学」以外の教科でコンパスを使って不正をする可能性がなかったからでしょう。しかし、県教委の発表では、鉛筆や消しゴムなどの5点以外のものを机の上に置くことを認めないことを、試験会場で、校内放送すると共に、試験前に注意事項として文書を受験生に配布したとのことです。

 当然、この放送や資料は、試験監督の教員も確認しているはずです。それにもかかわらず、1限、2限と放置し、言い換えれば、机の上に置いていることを認め、3限の「数学」の試験時にそれを没収し、それでも試験は受けさせ、その後、受験無効を電話で連絡する。こんな酷いことが許されるのでしょうか。

 私は、元横浜市立高校の教員です。当然、毎年入学試験の監督をしてきました。私が、まだ新任の教員だったとき、試験監督として会場に向かおうとしていた私に、先輩教員が言った言葉を忘れることができません。「水谷先生、私たち試験官の仕事は、受験生の不正を見つけることではありません。受験生が不正などできないようにきちんと見回り指導することです」

 私は、この言葉を、広島県のこの高校の先生たちと、教育委員会の人たちに言いたい。1限や2限の試験前に、コンパスが机の上に置いてあることを見た教員が、注意していれば、こんな事態にはならなかったでしょう。3限の場合でも、試験が始まる前にコンパスをカバンにしまわせていれば、それで済んだ話です。

 自分たちのミスを、受験生のミスとして、四角四面に裁く。相手は、幼い中学3年生なのに。こんな酷いことはありません。

 広島県教委にお願いです。受験生を裁くだけではなく、この試験に関わったすべての教員と管理職も裁いて欲しい。できれば、懲戒免職にして欲しい。受験無効を言い渡された中学3年生の生徒たちにとっては、明日への夢や希望を一瞬にしてすべて奪われたことになるのですから。それをしてしまった教員たちも同様に償うべきです。

 広島県知事にも、お願いがあります。今更、再試験や再入学は不可能でしょう。それは、無理なことはわかっています。しかし、県立高校に入学できず、私立高校に不本意ながら入学することとなった生徒たちに対して、余分にかかる費用の支援をして欲しい。心からの願いです。

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