また「瀬戸際」で「正念場」か…聞き飽きた?コロナ禍で繰り返される言葉 尾身会長「去年も言った」

黒川 裕生 黒川 裕生

政府の「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長が4月1日夜の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大防止の心構えについて「高齢者にワクチンが届く6月頃までが正念場」と話しているのを見て、既視感を覚えた人も少なくないのでは。思えば日本が本格的なコロナ禍に突入した2020年2月以降、政府や自治体のトップ、医師会などから「正念場」「瀬戸際」「勝負」といった“待ったなし”の言葉をもう何度も聞かされてきた気がします。整理する意味も込めて、神戸新聞のデータベースなどから主な発言を振り返ってみました。

冒頭の会見で尾身会長は「私、去年の春頃にも『正念場』という言葉を使ったと思いますが」と前置きした上で、「1年経って、また新たな状況の中で、6月頃までが正念場だと思います」「踏ん張りどころに来ている」などと述べました。

強いインパクトがあった「瀬戸際の2週間」

過去の記事を調べてみると、政府からのメッセージで最初にクローズアップされたのは「瀬戸際」です。2020年2月24日に開かれた専門家会議で「これから1〜2週間が急速な拡大か収束かの瀬戸際」という認識が示され、これが「瀬戸際の2週間」というキーワードとなり、各メディアでも繰り返し取り上げられました。ちなみに、この日の新規感染者数は13人、1月からの累計は160人(いずれも全国)でした。

「瀬戸際」のインパクトは大きく、5日後の2月29日には安倍晋三首相(当時)が会見で全国一斉休校の要請を明らかに。この「瀬戸際の2週間」は3月9日で期限を迎えましたが、専門家会議は「爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度は持ちこたえているが、警戒を緩めることはできない」として、引き続きイベントの自粛などを求めました。安倍首相も、会見や国会でしばらく「瀬戸際の状況が続いている」「瀬戸際の状態がある程度長期にわたって続く」などと述べていたのは、皆さんご記憶の通りです。

その後も、例えば神戸新聞の地元である兵庫県の井戸敏三知事が2020年4月、県内全市町の首長との意見交換で「感染爆発になるかどうかの瀬戸際」、5月には緊急事態宣言の延長を受けて「緩めると元の木阿弥になりかねない瀬戸際」と発言するなど、様々な局面で「瀬戸際」が登場。今年1月2日には、東京、埼玉、千葉、神奈川の4知事が首都圏の状況を「感染爆発の瀬戸際」だとして、緊急事態宣言の発令を検討するよう国に要請しました。

繰り返される「今が正念場」

一方「正念場」は、2020年3月5日の感染症対策本部会合で、当時の安倍首相が「今が正念場だ」と述べたあたりから頻出するようになります。

安倍首相以外にも、例えば6月3日には感染者数が減少傾向を示していた北九州市の北橋健治市長が「これからの数日間が正念場」と発言。また兵庫県の井戸知事は、7月29日に「感染者が急カーブで増えてきており、まさに今が正念場」、今年2月の緊急事態宣言延長決定を前に「規制を緩めるとこれまでの努力が無になる恐れがある。ここからが正念場」などと折に触れて口にしています。

そしてつい先日、尾身会長が「6月頃までが正念場」と語ったのは既に書いた通りです。

勝負の3週間→真剣勝負の3週間

最後に「勝負」にも触れておきたいと思います。

2020年11月25日、西村康稔・経済再生担当相が記者会見で「感染拡大を抑えられるかどうかは、この3週間が勝負」と述べました。しかし新規感染者数や重症者数は逆に増えてしまい、事実上の“敗北”に終わります。これに危機感を募らせた東京都医師会の尾崎治夫会長は、「勝負の3週間」終了から数日後の12月22日に緊急会見を開き、感染拡大や医療崩壊を防ぐために「真剣勝負の3週間。この3週間がラストチャンスだ」と警鐘を鳴らしました。

あらためて振り返ってみると、やはり思うところがないでもないですが、今が瀬戸際であり、正念場であり、勝負の時期であり続けているのはその通りなのでしょう。そのことを意識しながら、今後もできることをやっていくしかなさそうです。

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