猫本専門出版社「ねこねっこ」(所在地:千葉市、本木文恵代表)から3月中旬に発売された『猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑』。発行部数が1万部に達する勢いで、多くの愛猫家や保護ボランティアなどから「こんな本が欲しかった」と好評を得ています。
同書では、「今の日本の猫の暮らし」に沿った誤食・中毒を起こしやすい「食品」「植物」「家の中の物」を写真付きで紹介し、事故の予防・対応などを解説。猫専門医の服部幸先生(東京都江東区「東京猫医療センター」院長)が監修を担当しています。
今回の刊行にあたって「治せない病気がある一方で、誤食や中毒は飼い主さん自身が防いであげることが可能です。この1冊で猫の命を事故から守る知識を得ていただいて、猫との暮らしの安心・安全に役立てていただければ」という本木さん。出版しようと思ったきっかけや書籍を手にした方々の反響などを聞いてみました。
「誤食」事故が猫の手術・入院理由ランキングで2位 命を落とすことも…
本木さんによると、家の中で最も起きやすく、猫が命を落とすこともあるというのが、「誤食」による事故。ペット保険を扱うアニコム損保が2019年に発表した「家庭どうぶつ白書」でも、猫の手術・入院理由ランキングで、いずれも2位にランクインしたのが「消化内異物・誤飲」です。誤食・誤飲したものは時間の経過とともに排泄される場合もありますが、開腹手術など全身麻酔による治療が必要になることも。猫の身体に負担がかかるだけではなく、医療費も高額になるといいます。
また、誤食・誤飲したものの中には、猫にとって有害な成分を含む「中毒」の原因となるものがあり、それは食品や植物、化学製品などが挙げられます。
こうした誤食や中毒を予防するには、飼い主さんが「どんな物が、なぜ猫にとって危険となるのか?」を正しく知って、猫が勝手に口にしないように遠ざけること。しかし、インターネットなどで調べても断片的な情報だったり、その内容が信用できるのかどうかも分かりづらかったり…そこで、本木さんは飼い主さん向けに啓発の意味も込めて「猫にとって危ないもの」を集約して、1冊の書籍にまとめたそうです。
誤食・中毒を起こしやすいもの…「危険度」を1~3段階に分けて表示
本木さんは「ペットの病気に関しては年々健康意識が高まっていますが、誤食や中毒のリスクなどは見落されやすいように感じます。誤食と中毒は飼い主さんが気を付ければ、防いであげられるもの。不幸な事故などを少しでも減らしたく、これまでの事例を踏まえ猫にとってリスクのあるものを1冊に網羅しました」。
具体的には、2000年代に入ってから現在に至るまでの国内外の事故調査や研究報告を踏まえながら、品目ごとに「危険度」を1~3段階に分けて警戒レベルが分かるように表示。また、全て写真付きなので、名前がよく分からない植物であっても見た目から判断できるようになっているそうです。
ひもやおもちゃの誤食は要注意! ネギ類の中毒も危険…猫が口にしないように遠ざけて
本木さんが今回の書籍を作ろうと思ったのも、猫専門の編集ライターとして14年間たくさんの猫たちを取材してきた経験があったから。これまで聞いた中でとりわけ多かったという「誤食」は、ひも状のものや猫用おもちゃだとか。ひも状のものについては、犬猫が最も誤食しやすいことを示す調査もあり、腸で引っ掛かると組織を壊死させてしまうなど命を落とす危険があるといいます。
ただ「ひもの誤食を注意されている飼い主さんは比較的多いですが、意外と見落とされやすいのが猫用おもちゃです」と本木さん。「おもちゃは猫が遊ぶものだから安全だと思われがち。好奇心旺盛な若い猫がとりわけ誤食しやすいものなんです。中でも、ウサギなどの獣毛を使ったネズミ形のおもちゃや、鳥の羽を使ったじゃらしおもちゃは狩猟本能がそそられ、一気にかじって飲み込んでしまうことがあります」と話します。
一方、「中毒」で多いのがネギなどの中毒といいます。本木さんは「あくまで私がこれまで飼い主さんからお聞きした範囲ですが、タマネギ入りのハンバーグやニラ入りのチャーハンを食べたなど、料理にネギ類が入っていたという事例です。ネギ類の中毒を引き起こす『有機チオ硫酸化合物』という成分の影響は、加熱してもなくならないといわれています。ネギ類が入った料理に猫が興味を示しても、遠ざけるようにしたいですね」と訴えます。
コロナ禍ならではの誤食・中毒についても書籍で紹介
最近では、新型コロナウイルスの感染拡大によりマスク着用が日常化したことから、飼い猫がマスクのひもをかじって飲み込んでしまったり、丸ごと食べてしまって腸閉塞になったりするなど、マスクの誤食の報告が相次いでいるそうです。
書籍には、「中毒」の品目としてマスクをはじめ、「消毒液を付けた手を猫がなめるので心配」「殺菌効果のあるティーツリーは大丈夫?」など、飼い主さんの不安が高まっているコロナ禍ならではの中毒についても取り上げています。
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発売開始から品薄状態…愛猫家・保護ボランティアらから「こんな本が欲しかった」
『猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑』は3月12日から全国の書店で販売され、初版2千部はあっという間に完売。発売開始から品薄状態となり、2刷が3千部、3刷が5千部と重版したとのこと。
予想外の反響という本木さんは「企画したのが昨年の緊急事態宣言が始まった春ごろ。初めて猫を飼う方などに向け、啓発的な意味を込めて作りたいなと思いながら服部先生と相談を重ねてじっくり書き続けてきました。実際に出してみたときに『こんな本が欲しかった』という声が大変多く、作って良かったなと思っています」。
さらに「一般的な飼い主さんだけではなく、猫の保護や譲渡に関わっている保護団体や個人のボランティアの方々にも広く手にとっていただいたほか、動物愛護管理センター の職員さんからも適正飼養の普及啓発に活用したいという声もいただきました。これから猫を迎える方にお渡ししたいという方がいらっしゃったり。あるいは、ボランティア団体の方が複数冊買っていただいて、近所の動物病院に置いてくださるなど啓発用に使っていただいたりと、さまざまな用途でご購入していただいていると伺っています。
また本書は、特に初めて子猫を家族に迎え入れる方におすすめです。誤飲・誤食、中毒事故などが起きやすいのは、好奇心旺盛な若い猫。飼い始めたころにこういった不幸な事故が起きがちですので、子猫を飼う際に1冊手にしていただけたら幸いです」。
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猫が好きな方に役立つ本を作っていきたいという本木さん。現在も秋に発売予定の書籍作りに奮闘中です。テーマは、猫がかかりやすいとある病気について。また、今回の出版記念として、4月7日(水)に東京・神保町の書泉グランデで、監修者の服部先生によるトークイベントも予定されています。お問い合わせは、書泉グランデ5階フロア(03-3295-0011)まで。
【仕様・価格】
書名:猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑 〜誤食と中毒からあなたの猫を守るために
監修:服部 幸(東京猫医療センター院長)
構成:ねこねっこ
装画:霜田有沙
仕様:四六判/160ページ/フルカラー
価格:2,020(にゃおにゃお)円+税、税込2,222(にゃにゃにゃにゃ)円
※全国の書店や⼀部猫雑貨店やカフェをはじめ、Amazon・楽天ブックスなどオンライン書店で販売。
【監修者プロフィール】
服部 幸 (ハットリ ユキ)
東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 これまで北里大獣医学部卒。2005 年から猫専門病院長を務める。2012 年に東京猫医療センターを開院。2013 年、国際猫医学会からアジアで2件目となる「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルに認定される。おもな著書に『猫からのおねがい 猫も人も幸せになれる迎え方&暮らし(監修)』(ねこねっこ)、『猫を極める本』(インターズー)など。
■猫の本専門出版「ねこねっこ」とは?
猫専門の編集者・ライターが 2020 年 3 月に立ち上げた、猫の本だけを制作する“ひとり出版社”。「猫ブーム」に象徴される猫人気の影響や時代の移り変わりを経て、猫を取り巻く環境も、猫という生き物に向けられる感情も、大きく変わってきています。そんな中でも、人と猫がこれからもよりよい関係を築いていけるように。ねこねっこは、猫の「今」を見つめ、「未来」に役立つ本を専門家の協力のもと1冊ずつ丁寧に編み、猫が大好きな方達にお届けします。
■Twitter:「猫の本専門出版ねこねっこ 3/12新刊発売!書籍」(@neco_necco_net)https://twitter.com/neco_necco_net
■HP:「neco-necco」
neco-necco.net
■Amazon
https://amzn.to/3ueXg58