「水の浄化に役立てて」使い捨てカイロ回収…ひと月で約7トンに「届くのは善意とやさしさの結晶です」

平藤 清刀 平藤 清刀

使い捨てカイロを再利用して水の浄化プロジェクトを推進するGo Green Group(代表・山下崇氏)に、全国から続々と使用済みカイロが集まっている。その量はひと月で約7トンにもなり、環境問題に関する取り組みの一環として地元の中高生も加わって梱包を解く作業が行われた。

「私たちも協力したい」 生徒らの意志で学校の取り組みとして参加

4月3日、兵庫県西脇市にある株式会社石井加工に集まったのは、県立西脇高校、市立西脇中学校、同黒田庄中学校など地元の中学・高校生のほか、大阪から桃山学院高校の生徒ら。各学校それぞれに、引率の先生も一緒だ。さらにGo Green Groupが進めるプロジェクトに賛同した人たちも合わせた約40人。

 使用済みカイロは大小さまざまな段ボール箱や紙袋で梱包されて、全国から宅配便やゆうパックで届けられる。作業場の壁際には、この1カ月の間に届いた使用済みカイロがズラリと集積されていた。これらをひとつひとつ手作業で開封し、全体の量を把握して在庫管理するための箱に詰め替える作業を行うのだ。

石井加工は使用済みカイロ回収協力会社として、Go Green Groupの物流センターを担っている。

「あるビジネスセミナーで山下さんと知り合って、使い捨てカイロで水を浄化する事業をやろうとしている話を聞いて興味が湧いたのです。倉庫を探していることを知って、弊社のスペースを使ってくださいといって協力させてもらうことになったんです」(石井加工専務・石井紀安氏)

地元の中高生らが作業に協力することになった経緯も訊いてみた。

「私の子供が中学生で、このプロジェクトを学校の先生に話したら、先生から全校生徒に紹介してくれました。そうしたら生徒のほうから『ぜひ手伝いたい』という声が上がったそうです。先生は『こういう仕事をやっている人がいるよ』と紹介しただけなんですが、生徒さんたちに突き動かされて、学校の取り組みとして一緒に参加してくださっています」

桃山学院高校は、授業の中にSDGsや環境について取り組むカリキュラムがあるという。その一環としてプロジェクトに関わりたいという意向をGo Green Groupに伝え、カイロの回収・加工・浄化実験まで一連の流れを一緒にやることになっているそうだ。

カイロと一緒に「応援メッセージ」も

ラックに集積されたダンボールや紙袋の梱包を解いて、作業台の上で中身を取り出す。それを在庫管理のためのダンボール箱に入れて、別のラックに収納する。生徒たちは学校の垣根を超えて、終始あかるく和やかな雰囲気の中で作業が進んでいく。

作業の最中にも宅配便のトラックがやってきて、あらたに28個口のカイロが届いた。

石井さん曰く「平均すると1日当たり30~40個は届きます。そして届く量は日々増え続けています」

遠からず集積場所が手狭になることが見込まれるため、山下氏は同じ西脇市内に倉庫を借りる手配を進めている。

ところで、カイロと一緒にプロジェクトへ応援の手紙が添えられていることが多い。「捨ててしまうことに罪悪感あったので、水をきれいにするために再利用できると知って送りました」「会社で集めました。お役立て下さい」という内容や、中には地球を主人公にした手づくりの絵本を同封してきた小6の女の子もいる。

「ここに送られてくるのは、皆さんの善意とやさしさの結晶です。ただの使用済みカイロじゃないんですよね」(山下氏)

壁際に集積されていたカイロの山は、約2時間半の作業でほぼなくなった。詰め替えたカイロは東大阪市にある工場へ送って中身の鉄粉を取り出し、所定の処理を施したのち、キューブ状に成型して製品化される。

参考までに、東京海洋大学・佐々木剛教授の協力のもとで行われた実験では、1600平方メートルの実験池に週1回約20kgのキューブを13週間にわたって投入した結果、二価鉄イオンの作用でヘドロの量が減り、池の底が見えるくらいまで透明度が増したという。

これから暖かい季節へ向かっていくが、使い捨てカイロは年間をとおして販売されている。つまり暖かい季節でも、カイロの需要はなくならない。Go Green Groupでは使い終えたカイロは捨てることなく、回収に協力してほしいと呼びかけている。

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▼使用済みカイロの送り先
〒679-0313 兵庫県西脇市黒田庄町岡684-1
GoGreen 物流センター

▼GoGreenGroup 株式会社WEBサイト
https://go-green-group.com/

※使用済みカイロを送ってくれた人には、Go Green Groupから手漉き和紙のハガキでお礼状を出しているが、カイロが全国から殺到しているため、お礼状の発送が遅くなる場合がある。

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