終活といえば「お葬式の準備」とか「遺言書を準備しておくこと」をイメージしがち。しかし本願寺派教師・真樂寺副住職の髙藤俊行さん(42歳)によると「本当の終活は、それだけではない」という。お寺で終活の相談を受けてきたことをきっかけに、今では生前の準備はもちろん死後に発生する諸々の事務処理までをもサポートしてきた髙藤さんに「終活の心構え」を聞いてみた。
本当の終活とは…お葬式の準備だけじゃない!
髙藤さんは一般社団法人終活協議会が認定する「終活ガイド上級資格」と「終活ガイド検定認定講師」のほか「終活アドバイザー」などの資格を数種類取得して、終活サポートを行っている。また学生時代からコミュニティFMのラジオパーソナリティーも務めており、現在ではインターネットラジオ局を含めて2局で4番組を担当して、月に8回は番組収録のため放送局へ通う。
高藤さんが終活サポートに取り組むようになったのは、終活の相談でお寺を訪れる人が増えたからだ。
「昨今はお寺との関係が希薄になって『お寺離れ』が進んでいるといわれています。でも終活に関心のある人は多くて、お寺として終活の相談を受けることが多くなってきたのです」
「それならば」と、髙藤さんは2017年に「終活アドバイザー」と「終活ガイド上級」の資格を取って、終活の相談に訪れる人のサポートを行ってきた。その後も終活関連の資格を取り、現在は上記のほかに「心託コンシェルジュ」「エンディングノート認定講師」「身元保証認定講師」「遺言作成認定講師」の資格を有しているという。
具体的にどのようなサポートを行うのだろうか。
「終活という言葉が使われ始めた15年ほど前は、亡くなった後にお葬式をどうするかということだけと思われていて、葬儀屋さんが行うセミナーでも『終活=お葬式の準備』というイメージでとらえられていました」
しかし「本当の終活は、それだけではない」という。
「終活でやることを挙げたら、100以上あります。だから生前にやれることは、なるべくやっておいたほうがいいです」
たとえば家の名義変更や保険関係を整理しておくこと、そして案外疎かにされがちなのが「成年後見人」を選んでおくことだという。
「高齢で認知症になる方が非常に多いです。特に家族や近しい親戚がいらっしゃらない方は、ご本人に代わって財産を不当な契約などから守ることができる成年後見人を選んでおいたほうがいいです」
成年後見人は家族でもいいが、いない場合は弁護士、司法書士、社会福祉士などに頼むのが一般的だ。いずれの場合も、所定の手続きを経て家庭裁判所が選任する。
人生が終わらない人はいない
髙藤さん曰く「終活はライフプランニングです」。
「終活をやりましょう」というと、少し前までは「まだ元気だよ」とか「死ぬ準備なんて縁起でもない」と拒否反応を示す人が多かった。だが今は、雰囲気が変わってきたことを感じるという。
「たとえば積立型の保険に20~30代のうちから入っておくと、月々の保険料が安いです。死ぬ準備ではなく、リタイアしたあとに困らないための準備が大事なんです。そういう意味で終活をライフプランニングととらえて、特に資産の準備を始める時期は早ければ早いほどいいです」
ふだんの生活ではなかなか意識しないけれど、人生の終わりは誰にでもやってくる。そして死後には、さまざまな雑事が発生する。とくに独り暮らしをしていた人なら、携帯電話や新聞、ガス、水道、電気、NHKなどの解約手続きなど、生活を支えていたあらゆる契約をひとつひとつ解除していく作業が、思いのほか面倒だ。また持ち家なら、そのあと誰かが相続して住むのか、それとも処分するのか、遺言書を準備しておいたほうがいいだろう。
「そういった手続きを、成年後見人はできないのです。だから身寄りのない人は生前に『死後事務委任』も頼んでおかないと、金融機関の口座や仮想通貨と呼ばれる暗号資産が動かせなくなってしまいます」
一般的には、成年後見人が引き続き死後事務委任も引き受けられるように、その旨を公正証書にしておくことが多いらしい。
一口に終活といっても、いったい何をやればいいのか、何から手を付けたらいいのか、一般人には難しいことが多い。髙藤さんのように専門知識をもった人に相談するほかにも、終活をパッケージ化したサービスを提供する業者もあるという。