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雪の日のフォークリフト事故をヒントに 布が路面の水膜を吸収して摩擦を確保…布製タイヤチェーン「イッセ・スノーソックス」日本で注目集める背景

鈴木 博之 鈴木 博之

冬の雪道対策として、布製タイヤチェーンが選択肢の一つとして広がりつつあります。東京ビッグサイトで開催された「国際オートアフターマーケットEXPO2026」でも関連製品が出展され、来場者の関心を集めていました。

布製タイヤチェーン「イッセ・スノーソックス」を開発・製造しているのは、スペイン・バルセロナ近郊に本拠を置くISSE Safety(イッセ社)です。日本では合同会社ESTトレーディングが総代理店として販売しています。同社に製品誕生の背景や技術的特徴について聞きました。

開発の出発点はバルセロナの繊維工場での出来事

イッセ社の創業家は、もともと繊維工場を経営していました。バルセロナ近郊は温暖な地域ですが、寒波の影響で雪や路面凍結が発生することがあるそう。ある雪の日、工場から倉庫へ向かうフォークリフトがスロープでスリップし、作業が一時停止する事態になったといいます。

その際、「路面に布を敷けば摩擦が生まれるのではないか」と考え、実際に試したところ滑りが軽減されたといいます。この経験をヒントに布を地面に敷くのではなくタイヤに直接装着する方式へと発展させました。こうして“ソックス型”の布製タイヤチェーンが生まれたのです。

ブランド名の「ISSE」は、発明に関わったIsaac氏とSergio氏の頭文字を組み合わせたもの。製品は現在もバルセロナ近郊の工場で生産されており、紡績から編み立て、縫製まで一貫して行っているとのことです。

滑りを抑える鍵はタイヤが触れることによる「水膜」の処理

布製タイヤチェーンが機能する仕組みについて、同社は「水膜」の処理にあると説明します。雪道や凍結路面では、タイヤと路面の間に薄い水の膜が生じ、これが滑りの原因になるのです。

イッセ・スノーソックスは、高強度ポリエステル繊維を用いた立体的な編み構造を採用することで、走行中に布が路面の水分を吸収・保持し、タイヤの回転によって外側へ排出し、タイヤと路面の間の水膜を減らして、摩擦を確保する仕組みだといいます。

そのため、圧雪や水分を含む雪道では効果を発揮しやすいのですが、完全に凍結したアイスバーンでは金属チェーンのように氷を引っかく構造ではないため、同等の効果は得られません。ただし、未装着時と比較すると発進や制動の性能は向上するそうです。

性能については、欧州標準化委員会(CEN)が定める規格に適合しているほか、米国のコロラド州やワシントン州の運輸局ではスノーチェーンとして認められています。

日本ではシチュエーションに対応するべく4モデルを展開

現在、日本で展開しているのは4モデルです。最上位モデルの「スーパー」は標準モデルに比べ約25〜30%制動性能を高めた仕様で、SUVや使用頻度の高いユーザー向けで、4トン車までのトラックにも対応。

「クラシック」は標準モデルで、装着性や価格とのバランスを重視した仕様です。「リサイクル」は約30本分のペットボトルから生まれた再生ポリエステルを使用した環境配慮型モデル。「スベーネ」は日本限定モデルで、1万円以下と価格を抑えつつもイッセの技術を採用しています。

耐久性の目安については、最上位モデルで積雪路面において100km以上、アスファルト路面だけでも80km走行しても、製品に目立つダメージはなかったとのこと。端部と中央で織り方を変える特許取得済みの構造により、継ぎ目をなくし、タイヤへの密着性や耐久性を高めているといいます。制限速度は時速50kmで、長時間のアスファルト走行は想定していません。雪道や凍結路での一時的な使用を前提とした製品です。

また、スノーソックスは駆動輪に装着しますが、フルタイム4WDの場合は4輪装着のほうが十分な性能を発揮できるそうです。運転時の注意点としては、「アクセルワークを通常通り行うこと。踏み込みや、必要以上にトルクをかけるような運転はしないように心がけてください」とのことでした。

日本市場で布製タイヤチェーンの関心が高まる背景

同製品は、2018年改正の国土交通省によるチェーン規制に適合しています。ただし、区間や道路管理者の判断によっては布製チェーンでは通行できない場合もあるため、現地の指示に従う必要があります。

日本で関心が高まっている理由について同社は、降雪頻度が低い地域ではスタッドレスタイヤの装着率が必ずしも高くないことや、近年の車両はタイヤの大径化やタイヤハウス内のクリアランス縮小が進み、従来型チェーンが装着しづらいケースがあることを挙げています。

また、金属チェーンと比べてアスファルト路面を傷つけにくい点や、軽量で装着が比較的容易な点も特徴としています。スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤ、サマータイヤのいずれにも装着できます。

布製タイヤチェーンの技術を応用したシューズカバーも登場

同社は布製タイヤチェーンの技術を応用し、雪道用のスノーシューズカバーも展開しています。オーバーシューズ型で靴の上から装着するタイプです。足裏にはスパイクを配置し、布が水分を処理する役割と、スパイクが雪や氷に食い込む役割を組み合わせています。

雪道対策は地域や使用環境によって求められる性能が異なります。金属チェーン、非金属チェーン、スタッドレスタイヤに加え、布製タイヤチェーンという選択肢も含め、用途に応じた使い分けが進みそうです。

▽ESTトレーディング
https://issechains.jp/

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