「終活」というと遺言やお墓など“人生の終盤”の準備を思い浮かべがちです。52歳の女性も当初はそう考えていました。転機となったのは母の突然の入院です。
入院後、兄弟と一緒に荷物整理や契約関係の手続きを担うことになりましたが、長年ため込まれた衣類や家具、複数の場所に分散していた通帳や保険証券、細かな書類の数々に直面。想像以上の労力と時間を要しました。
「もし母が元気なうちに整理していてくれたら、私たちの負担は大きく減っていたはず」と振り返ります。
その体験から自宅を見渡すと、既に独り立ちした子どもが置いていった荷物や使っていない家具、思い出の品が手つかずのまま残っていることに気づきました。
夫は「そのうちでいい」と構えていますが、女性の心境は異なります。「今のうちに準備を始めなければ、子どもたちに同じ苦労をさせてしまうのではないか」と母の入院を機に芽生えたこの不安が、終活を真剣に考えるきっかけになったのです。
母の入院で気づいた“身近にできる終活”
母の入院をきっかけに終活を意識した女性は、「終活=死後の準備」ではなく、今の生活を安心して過ごすための前向きな準備だと感じるようになりました。遺言やお墓のことだけでなく、片づけや書類整理といった身近なことからでも立派に始められます。
実際に取り組みやすいのは、例えば次のようなことです。
・不用品を処分して生活スペースをすっきりさせる
・銀行口座や保険証券の場所を家族にもわかりやすくまとめる
・健康診断や持病に関する情報をメモに残す
・加入している医療保険や生命保険の内容を確認する
これらは特別な作業ではなく、日常の延長線上で少しずつ進められるものです。早めに取り組むことで、時間的にも気持ちの面でも余裕をもって整理でき、家族に負担を残さない安心感につながります。
52歳からの終活準備─モノ整理・生活情報共有・お金の見直し
老後資金についてしっかりと計画を立てることは、安心して暮らすための大切な一歩です。ここでは無理なく始められる3つの準備をご紹介します。
1. モノの整理
まずは家の中の物の見直しから始めましょう。特に子どもが残していった荷物や、長年使っていない家具は整理しやすい部分です。
思い出の品は一度に処分する必要はなく、「本当に残したいもの」を選ぶ気持ちで取り組むと負担が軽くなります。整理された住まいは暮らしやすく、今後の生活の質も高めてくれます。
2. 生活情報の整理
次に大切なのが生活情報の整理です。銀行口座や保険証券、年金関連の書類、そして医療情報などを一か所にまとめておくと、万が一のとき家族が困りません。
専用のエンディングノートを用意するのも良いですが、シンプルなファイルにまとめておくだけでも十分に役立ちます。大切なのは「どこに何があるのか」が夫婦や子どもに共有されていることです。
3. お金の見直し
教育費の負担が終わり、家計に少し余裕が出てくる時期でもあります。今こそ保険や資産の見直しを行うチャンスです。
たとえば、独身時代や子育て期に加入した生命保険は、現在の生活に合っていない可能性があります。また、公的年金の受給見込み額を夫婦で確認しておくことも重要です。将来の生活設計を共有することで、不安を和らげ、安心につながります。
「早すぎるかな」と思う時こそ、最適なスタートの時期
終活は“死に支度”ではありません。大切な家族に余計な負担をかけないための「思いやりの準備」です。特に子どもに片づけや手続きを押しつけたくないという気持ちは、多くの方に共通しています。
52歳という年齢は、まだまだ元気で体力もある時期。だからこそ、余裕を持って少しずつ整理を進められる絶好のタイミングです。
夫婦二人暮らしだからこそ、これからの暮らしをより快適にし、子どもや家族に安心を残すための終活を始めてみませんか。 「早すぎるかな」と思う時こそ、最適なスタートの時期なのです。
【監修】財前裕(ざいぜん・ゆたか)1級ファイナンシャル・プランニング技能士 元銀行員・Webライター。銀行員時代には、個人の資産運用や住宅ローン、保険など多岐にわたる金融商品の提案を行い、顧客のライフプランに合わせた最適なアドバイスを提供してきた経験がある。現在FP1級を取得し、Webライターとして、お金に関する記事執筆を担当している。