気になる我が子の友達関係。小学生女子の保護者の方からこんなお悩みがありました。「放課後4人で集まって楽しそうにしているけど、実はとても気をつかっていて、疲れているみたい。会話をよく聞いていると『あいつむかつく』などと人の文句を言っていたり、言葉使いも悪かったりしている」…このまま娘さんをこの仲良しグループに入れていて大丈夫なのか、気になっているそうです。
小学校の子どもを持つ保護者が遭遇しがちな学校トラブルと対処法をまとめた書籍「学校トラブル18 保護者のお悩み解決します!」が出版されました。ネットいじめ・ハラスメント専門家のくまゆうこさん、教育学者の小野田正利さん、弁護士の鬼澤秀昌さんが、それぞれの専門分野から回答しています。本の中から抜粋して紹介します。
子どもと親は別人…「こうしちゃダメ」というのではなく、本人のよりよい意思決定につなげて
くま:学校からすると、この「気を使いながら子どもが交友を続けている」状況は、「よくあること」に分類されると思うので、転校やクラス替えなどを学校に進言するのは現実的な解決策ではありません。まずは担任に「最近子どもの言動が悪いので注意をしたら『みんなが(同じように)言っている』とのことでした。少し関係などを教えてくれませんか」「あまりに粗い言葉使いは家庭でも注意するので、学校でも注意してくれませんか」など相談していくことがよいでしょう。
鬼澤:本人がグループから抜けたいのであれば、答えがでなくても、どうやったら抜けられるかを一緒に考えてあげます。抜けたい気持ちと抜けたくない気持ちを整理してあげて、ポジティブな関係になれそうだったら「少しずつ悪口をやめようと言ってみる?」とか提案する形ですね。
言葉使いだけでなく、人を傷つけかねない行為をその集団にいると一緒にしてしまうという場合は、子どもが罪悪感を表している際に都度話を聞き、一緒に考えていくほうがいいですね。また、このような情報が入ってきたときは、子どもも被害者の可能性があります。
ただ、子どもと親は別人です。「こうしちゃダメ」というのではなく、本人のよりよい意思決定につなげていくことが大事です。子どもが所属するグループの言動が被害者を生み出しかねないリスクがある場合は、その子と話し合った上で、その子の意思で回避するか決めることが大事です。そのために先生とも情報共有することが大事だと思います。
小野田:「スクールカースト」という言葉が一時期から意識されるようになりました。「一軍」「二軍」「三軍」というような関係は確かにあるのでしょう。子どもたちのパワーバランスについて分析するのは非常に難しい。集団がバランスを保つために、誰かをおとしめている場合は早急に改善が必要でしょうが、ある意味そのグループに所属することで安心感を得ていることがあると思うのです。
子どもを無菌室で育てることはできません。親の目には「嫌なもの」かもしれませんが、子どもは自分の友達を自分で選んでいます。ボーダーを超えそうな危うさがある場合、しっかりとその交友を続けることの意味について対話する必要があるでしょう。
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▽くまゆうこ(ネットいじめ、ハラスメント専門家/株式会社マモル代表)…テクノロジーでいじめやハラスメントを早期発見し、いじめで悩む人が少なくなる社会を目指す。
▽小野田正利(教育学者/大阪大学名誉教授)…専門は教育制度学・学校経営学。学校と教職員の “等身大の姿”を明らかにすることをライフワークとしている。
▽鬼澤秀昌(弁護士/おにざわ法律事務所代表)…自治体のスクールロイヤーや学校法人の顧問、教員向けの研修講師、文部科学省スクールロイヤー配置アドバイザー。
「学校トラブル18 保護者のお悩み解決します!」は東洋館出版社刊。1100円(税込)。ほかにも「入学準備・備品準備」「担任の先生と子ども」「子どもの友人関係・けが・登下校」「PTA」「子どもの発達支援」にまつわる幅広いテーマを取り上げています。
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