7500万人ともいわれる日本人のメガネ利用者。もはや体の一部と化して意識されにくいが、メガネにも独特の用語が存在する。
メガネの「ヨロイ」って何?
日本人でメガネもコンタクトレンズも使っていない人の割合は22.3%しかなく(2018年・マクロミル調べ)、メガネかコンタクトレンズまたは両方使っている人の割合がひじょうに高い。
メガネを使うことが当たり前になりすぎて、メガネに専門用語があることを意識したこともない。どんな用語があるのか、眼鏡店に勤めるAさんに聞いた。
「なんでこんな用語になったのか、由来がよく分からない言葉の代表は、たぶん『ヨロイ』でしょうね」
メガネに「ヨロイ」とはイメージしづらいが、これは「リム」と「丁番(ちょうばん)」を繋ぐ部位を指す。
「リム」とは、レンズを取り囲む縁のこと。縁の内側に「リム線」という溝が切られていて、レンズの周囲を「リム線」にはめ込んで固定されているのだ。
「丁番」は「蝶番(ちょうつがい)」とか「ヒンジ」とも呼ばれて、「ツル」を開閉するときに可動する部位である。
用語をひとつ説明するだけでも、別の用語が次々に出てくるのが面白い。
「ツル」は、リムから延びて耳にかかる部位で、「腕」とか「テンプル」とも呼ばれる。顔の両サイドに直接触れるため、かけ心地や横から見たルックスに大きく影響する部位でもある。ちなみにレンズに直接「ツル」や「ブリッジ」(後述)が取り付けられていて、「リム」のないタイプを「リムレス」という。
また「ヨロイ」のことを「智(ち)」とも呼ぶが、いずれも語源は分からない。
「ツル」の内側に記されている謎の数字と記号は「ボクシングシステム」
「メガネには『ボクシングシステム』という、世界共通のルールがあります」
メガネをはずして「ツル」の内側を見てみよう。数字と記号が書かれているはず。これが世界共通の表記で、そのメガネの情報を記録してあるのだそうだ。
たとえば筆者のメガネには「54□15-143」と記載されている。これは「レンズ幅54mm、ブリッジ幅15mm、ツルの長さ143mm」という意味を表し、「□(正方形の記号)」はボクシングシステムを表す印だ。
ここでまた聞きなれない「ブリッジ」という言葉が出た。
「左右のレンズを繋いでいる部位が『ブリッジ』で、ノーズパッドのないタイプを『一山(いちやま)』といいます」
「ブリッジ」の形状はもともと「一山」で、ブリッジを鼻の上に直接のせていた。だが、全般に鼻の低い日本人には馴染みづらいため、ノーズパッドが考え出されたそうだ。
日光に当たると色が変わるレンズの正しい呼び方は「へんこう」or「ちょうこう」?
「日光に当たったら色が濃くなって、サングラスみたいになるレンズがありますね? あのレンズのことを、何レンズと呼んでいますか?」
光で色が変わるから「変光(へんこう)レンズ」だと思っていたら、そうではないらしい。
「正しくは『調光レンズ』です。『フォトクロミック』ともいいます」
読み方が同じ「へんこうレンズ」でも「偏光レンズ」というものがある。これとは違うのだろうか。
「光が乱反射してギラギラするまぶしさを抑える『偏光膜』を、レンズの表面に施したレンズのことですね。これは、色は変わりません」
ということは、メガネ屋さんでメガネをつくってもらう際に、調光レンズのつもりで「へんこうレンズ」といったら「偏光レンズ」と受け取られてしまうかもしれないということか。
「メガネ屋さんもプロですから、そういう間違いが多いことは分かっています。『日光で色が変わるレンズのことですか?』って訊いてくれますよ」