「一人で悩まないで」シングルマザーの住居、子育て、学び、就労を2年間一括サポート「ママこれ」の挑戦

山本 智行 山本 智行

 保育園の運営や人材紹介などの事業で働く女性をサポートする「Animo(アニモ)」(大阪市)は、0~2歳の子どもがいる全国のシングルマザーを対象に社会復帰と自立を支援するプログラム「ママのこれから」をスタートさせた。就業先はもちろん、住居、保育所、さらには資格取得支援まで2年間にわたり、一貫して支援する画期的で心温まるプロジェクトだ。

 トータルサポートを自負するだけあって、その手厚さと守備範囲の広さに驚く。女性の社会復帰やキャリア形成を支援し、急成長している「Animo」では「暮らす」「育む」「働く」「学ぶ」の4つのサポートでシングルマザーが自立して生活できる環境づくりをサポートしていく。それが「ママのこれから」だ。橋本典子代表取締役が力を込める。

 「どうしたらもう一度社会へ踏み出して行けるか、みなさん不安に思っていることでしょう。仕事は?育児は?最初は門を叩くのも怖いことでしょう。でも、1人で悩まず、勇気を出して相談してください。子どもたちの明るい未来はママが元気でないと開けてきません」

 実際、厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」によると、全国の母子世帯数は約123万2000世帯。その貧困率は悲しいかな5割を超えると言われており、このコロナ禍でさらなる窮地に陥っていることは想像に難くない。

 Animoでも昨年8月から9月にかけ、全国のひとり親家庭を対象に「現在、生活の中で不安に思うこと」をインターネットで問いかけた。結果は「収入や費用の金銭面」が最多で、次いで「今後のキャリア」「育児・保育所探し」「住居」と続いたという。

 仕事を優先すれば、子育てがおろそかに。子どもの学習意欲に応えてあげようとすると自身の就業に支障をきたし、将来の備えがおぼつかない。そんな問題点を解決するには一気通貫のプログラムが必要だと橋本代表は痛感したという。

 そこで、大阪府内を中心に企業主導型保育所の運営を受託し、人材派遣なども行っている自社の事業を有効に活用。必要な資金はクラウドファンディングの力を借り、サポート体制を整えた。対象者は入園するのが難しい0~2歳の子どもを持つシングルマザーに絞った。全国から受け付けるが、面談を経てOKとなった場合、対象者の住居、勤務地、保育所は大阪府内とする。

 このプログラムの特に画期的なのは住まいに関して、だろう。まずは引っ越し費用を負担。その上でテレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジの家電4点セット付きの住居を用意する。さらに、アニモが運営する保育園に子どもを預けられるようにし、保育園や介護施設などをはじめ、協力企業への派遣という形で働いてもらう。住居、勤務地、保育所の3つはできるだけ近くなるように配慮。家賃(上限付き)や保育料の支援なども行う。

 またビジネススクール事業を展開している強みをいかし、マナー講座などを無料で受講できたり、各種の資格取得を支援。キャリアアップ制度も設けられ、メンタルヘルスやカウンセリングなども受けられる。

 「2年間の支援期間は手を取り合いながらサポートしますので、強い気持ちをもってチャレンジしてください。その間にひとり立ちしてもらって、羽ばたいて行ってほしい」

 こう語る橋本代表は元救命救急士。結婚し、3人の子育てにおわれながらのキャリア形成に戸惑ったという。それを救ってくれたのが竹に穴を開け、模様を入れていく竹灯籠の制作。そのセンスは趣味の域を超え、芸術作品として販売、ホテルや駅で展示されるようになったことが自信につながった。

 2016年2月に起業すると、順調に業績を伸ばし、現在は大阪府内はもちろん、沖縄県、岡山県、東京都などで17の保育園を受託運営している。その保育園の特徴のひとつが子どものできたを称賛し合う「ホメログ」の取り組み。「寝返りをうてた」「名前を呼ぶと返事ができた」など、つい見逃しがちな子どもの成長記録を専用アプリを使って届けており、これは自身の体験も踏まえての母親目線から来ているようだ。

 最後に社名Animoのいわれを聞くと「わたしがなぜか野性的と言われ、アニマルからネイティブ発音のアニモとなり、調べてみるとスペイン語で”がんばって”という意味と分かった」と言う。その一方で「会社を立ち上げるなら順番の早い、あ、から始まる言葉をつけたかった」と野性的ではない一面もチラリ。

 「わたしたちは働く女性と企業とのパイプ役。Animoに行けば、なんとかなる、と言われるように、これからもずっとマザーズハローワークのような存在として成長していきたい」

 ママのこれから?当然、明るいに決まっている。

「ママのこれから」https://mamakore.jp/

 

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