食パン1斤の「斤」って何? 包装食パンは「1斤340g以上」のルール、尺貫法とは違う重さの謎

金井 かおる 金井 かおる

 スーパーで買い物時、食パンの袋に印字された文字が目に飛び込んできました。

 「1斤は340g以上です」

 食パンを数える単位「斤」は常識ですが、よくよく考えると斤は尺貫法の重量の単位です。尺貫法で1斤=600g。では食パンの340g以上って? 調べてみました。

ポンド→听→斤?

 まずは「斤」の意味から。三省堂国語辞典第七版によると、「(1)〔尺貫法で〕質量・重量の単位。一斤はふつう六百グラム。(2)食パンのかたまりを数える単位。重さは、だいたい三百から四百グラム」。

 なぜ食パンの「斤」は尺貫法の斤とは重さが違うのでしょうか。

 「日本の食パンの1斤は尺貫法の1斤とは直接関係はありません」と教えてくれたのは、パン食普及を目的に活動を行うパン食普及協議会の担当者です。

 「簡単にご説明すると、食パンの斤は、昔は食パンの大きさを表す言葉や、ポンドから来ているという説もあり、由来ははっきりしていません。しかしながら、欧米では重量1ポンド以上という決まりがあったことから、『1斤とは生地重量453g(1ポンド)以上のパン生地を焼成し、最終重量340g以上のもの』として考えております」(パン食普及協議会担当者)

 食パンという名称が登場したのは明治初期ごろ。「主食用のパン」からきたといわれています。当時、アメリカやイギリスから輸入した食パンの焼き型は焼き上がりが1ポンド以上になる焼き型でした。一説には、ポンドの漢字表記「听」(きん)と同じ音である「斤」が混同して使われたため、また「听」の字の代わりに「斤」を使い始めたためともいわれているようです。

 ちなみに「340g以上」の数字の根拠について、食パンの表示の適正化を図る日本パン公正取引協議会は過去に、「1ポンドという重量にも配慮して重量453g以上の生地を3つ焼き型に入れて焼き上げ、両端を切り落として3等分し、それに食パンの製品重量のばらつきを考慮し、また食パンの流通実態を配慮して決めたもの」と見解を示しています。

「1斤は340g以上です」任意表示から義務化に

 明治時代から使用された食パンの販売単位「斤」は、今から約20年前まで重量の定義がないままでした。そのため地域や製パン業者によりばらつきがあり、ルールを求める声が高まりました。

 消費者に不利益をもたらさないためにも、前出の日本パン公正取引協議会は業界ルールを定めます。2000(平成12)年10月1日施行「包装食パンの表示に関する公正競争規約」です。

 スーパーやコンビニなどで販売される袋に入った包装食パン1斤の最低重量は「1斤は340g以上」に決まります。当初は任意表示でしたが、2012(平成24)年5月31日からは義務表示になりました。

・包装食パン1個の重量が340g以上のものについては、「1斤」と表示する。

・包装食パン1個の重量が340g以上のものについては、1斤を340gとして換算した重量を斤を単位として表示することができる。

・包装食パン1個の重量が340g未満のものについては、1斤を340gとして換算した重量を斤を単位として表示する。

(「包装食パンの表示に関する公正競争規約」保証内容重量より)

 「保証内容重量の表示には『1斤は340グラム以上です。』又は『1斤は340g以上です。』と併記する」というルールもあります。冒頭のスーパーで見た文言はこのルールに則った表示でした。

実際に比べてみると…

 表示例は包装食パン1個の重量が510g以上の場合 「1.5斤」、340g以上の場合「1斤」、306g以上の場合 「9/10斤」または「0.9斤」、255g以上の場合 「3/4斤」または「0.75斤」、170g以上の場合 「半斤」または「1/2斤」「0.5斤」など。最近見かけることが増えた3枚入り食パンの表示を確認すると、「半斤3枚切り」「1/3斤3枚切り」でした。

 人気の食パン2種、山崎製パン「ダブルソフト」と敷島製パン「超熟」を購入し比べてみました。ダブルソフト(6枚切り)には「1斤6枚スライス 1斤は340g以上です」、超熟には「1斤(1斤は340g以上です。)」。重さはダブルソフトは約400g、超熟は約380g。並べてみるとダブルソフトの方がサイズは大きく見えますが、いずれも同じ「食パン1斤」です。

 このルールは日本パン公正取引協議会に加盟する製パン会社約70社、2団体が対象。加盟社以外や個人経営のパン店などは対象外だそうです。

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