230年以上前にもう!?「顔の十字線」に「骨格」まで…江戸時代のイラストマニュアル本に注目集まる

中将 タカノリ 中将 タカノリ

江戸時代イラストマニュアル本がSNS上で大きな注目を集めている。この本を紹介したのはteradaさん(@terada50397416)。

顔を描く十字線、関節の仕組み、手の描き方…現代のものと比べても質的に遜色ないその内容に、SNSユーザー達からは

「すごいですね!2021年の今になっても、1787年の物にワクワクします」

「どことなく西洋ぽいので鎖国前か、鎖国中も交易していた中国経由ないしオランダか、吉宗の時代に思想的危険性が無い科学や理数学に限って制限を緩めたか、どれかのタイミングで入ってきたぽいですね。」

「実は西洋美術から技術をかなり取り入れていた日本。江戸時代って鎖国って言われているけど、調べれば調べるほど、そうでもないってのがわかる。」

など数々のコメントが寄せられている。

1787年と言えば老中、松平定信が寛政の改革を始めたとされる年…そんな大昔に既にこのようなイラストマニュアルがあったとは驚きだ。この書物についてteradaさんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):現代のイラストマニュアルにも通じる本格的な内容で驚きました。これはどのような書物なのでしょうか?

terada:この本の名前は『紅毛雑話』で、江戸時代の蘭学者、森島中良によって書かれました。紅毛とは白人を指す言葉で、ここでは日本と貿易のあったオランダ人を指します。オランダに関する色々な話を集めたのので、紅毛雑話と名付けられたようです。

中将:イラストマニュアルだけでなくさまざまな内容が盛り込まれているんですね。この書物をお読みになった印象をお聞かせください。

terada:雑話と言うだけあって、本の内容は様々だと感じました。エレキテルや顕微鏡のような科学技術、海外の動物、病気の話など多岐に渡ります。その中に美術に関する話もありました。顔を描く時にアタリとして十字線を描くというのは今では普通に使われている技法ですが、それが江戸時代の書物にあったことに驚き、早速ツイートしました。

中将:ご投稿に対し、数々の驚きの声が寄せられています。今回の反響へのご感想をお聞かせください。

terada:それほど耳目を惹く内容だとは思っていなかったのですが、100万インプレッション超という望外の注目を集めることになりました。その理由として、江戸時代はまだ野蛮な時代であり多くの技術は明治以降に入ってきた、という先入観が多くの人にあったことがあるのではないかと思います。しかし、その印象に反して江戸時代にはすでに多くの科学技術や知識が伝わってきており、西洋風の絵も数少ないながらも描かれていました。

一連のツイートでは、遠近法や銅版画といった技術が江戸時代にあったということも紹介しました。これらも多くの人にとっては意外だったのではないかと思います。

鎖国によって立ち遅れていた日本が明治に西洋の技術を学んで躍進した、という単純な見方が日本ではいまだに支配的なのだろうと思います。しかし、明治になって突然日本という国が進歩したのではなく、その基礎となる部分は平和な江戸時代を通じて着々と固められていたのではないかと思っています。その歴史的グラデーションの一端を紹介したことで、多くの人が江戸時代の日本もなかなか凄いじゃないかと感じてくれたのなら喜ばしいです。

◇ ◇

teradaさんによると、江戸時代、絵は師匠について習うのが普通だったが、それだけでは絵を習いたい人の数に追いつかず、絵手本と呼ばれる絵の描き方に関する教則本が多く発売されたのだという。

teradaさんはご自身のTwitterアカウントで、江戸時代のさまざまなの書物について紹介している。温故知新と言うが、歴史的な経緯を正確に知ることは現代を生きる我々にとっても考えを深める大きな助けとなる。ご興味のある方はぜひteradaさんのアカウントをチェックしていただきたい。

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