巨大な“切り絵”ドラゴン出現! 話題の即興切絵パフォーマー・辻笙さん…新成人の節目に大作 作家ら15人が作品展

平藤 清刀 平藤 清刀

今年二十歳になる15人の若いアーティストたち。1枚の紙から切り出した切り絵や1本のボールペンだけで描かれたペン画など力作がズラリと並ぶ。

日々進化する「製作過程を見せる」絵画

専門学校や美大などで学ぶ学生で、今年中に成人を迎える若手のアーティストばかり15人の作品を集めた展示会が行われている。場所は、近鉄大阪線「恩智」駅から歩いて8分、築250年の古民家を改装した「茶吉庵ギャラリー」を入ると、まず目を惹くのが、天井から吊るされている巨大な龍の切り絵「龍の祈り」だ。

作者は辻笙(つじ しょう)さん。幅120cmのロール紙を7m使って切り出したという。

「切り貼りはせず、1枚の紙から切っています。あるイベントで大きな作品をつくろうということで、集まった作家さんたちで先に思い思いの色をつけてもらって、その後で切りました」

幼いころから絵を描くことが好きだったという笙さん。2010年の第59回こども二科展に入賞したのを皮切りに、MOA美術館児童作品展や住友生命こども絵画コンクールなど、毎年のように何らかの展覧会で入賞してきた。お母さんの邦恵さんによると、「形をつくること」に興味をもちはじめたのは小学生の頃からだそうだ。

いまは京都芸術大学で学ぶ傍ら、即興切折紙パフォーマーとして天満天神繁昌亭に出演したり、NHKの「おはよう関西」や「ぐるっと関西おひるまえ」などテレビ番組でも紹介されたりして即興切絵を披露している。

即興切絵というのは、たとえば「猫を切ってください」とオーダーすると、下書きなしで猫の形を切り出して、しかも立体に折る。手のひらに乗るくらいの小さい作品なら、わずか2分ていどで完成させる。目の前で実演してもらったときの動画がこれだ。

今回展示している「龍の祈り」も、形を切り出した後で立体に折るという手順は同じ。製作時間は思いのほか早く、塗料の乾燥時間を含めて4時間くらいだそうだ。それが天井をぐるっと1周するように舞う姿が圧巻だ。

これだけ大きい作品は、運搬と搬入がさぞかし大変そうに思うが、辻さん曰く「紙なので折りたためるし、修復もしやすい」とのことで、意外に簡単なのだそうだ。

今回は、なぜ龍をつくろうと思い立ったのだろうか。

「最近は主として動物をつくってきました。いまの技量でどれだけできるのか、自分で確認する意味も込めて、もともと大好きだった『龍』にチャレンジしました」

今後は、笑点に出演して切り絵を披露してみたいという。また海外にも進出して、いろんな国の人たちの前でパフォーマンスをしてみたいとも語る。

「自分のパフォーマンスや作品を見て、皆さんが驚いたり笑顔になったりしてくれるような作品をつくっていきたいです」

   ◇

「龍の祈り」に寄り添うように舞っている、小さな龍がいた。

「これは吉田琉平くんとのコラボ作品で、先に龍を切り出してから色をつけてもらいました」

その吉田琉平さんも今年成人する若手アーティストの1人で、絵画を3点出展している。うち1点はあえて未完成のまま展示しており、展示会の期間中に製作過程を見せるというユニークな展示方法をとっている。

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次に目を惹いたのは、約800ピースのレゴブロックを組み上げた「破壊のシヴァ」。

作者の「やまげん」さんが解説してくれた。

「インドに伝わる破壊と再生の神様『シヴァ』がモチーフになっていて、傍らにいる蛇は金運と力を象徴しています」

ちなみにイメージ通りに仕上げるためには国内で手に入らないパーツがあって、わざわざ海外から取り寄せたという。製作期間は約4カ月を要した。

シヴァの足元には、昨年からのコロナ禍でにわかに注目を浴びた疫病退散の妖怪「アマビエ」が鎮座している。これは小さいので約200ピースのレゴブロックで、製作期間は1~2カ月だそうだ。

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そして時節柄か、マスクがアートになっていた。

「ぼっくり星人」さんが平面に描いた絵を、「八八 八(やはち えいと)」さんが立体のマスクに仕上げた「肥大」というタイトルのマスク。ぼっくり星人さんに無茶ぶりして、実際につけてもらった。

ほかにも絵画、陶芸、1本のボールペンだけで描かれたペン画ほか、どれも力作ぞろい。いつ頃から作品作りを始めたのか、在廊していた作家さんたちに聞いてみると、小学生から中学生の頃には絵を描くことが好きだったり何らかの作品をつくっていたりしたという。

「やはり子供時代からの積み重ねがあって、これだけの作品が生まれるんですよね」(辻笙さん母・邦恵さん)

会場は築250年の元木綿問屋を改装

今回の「新成人展」の会場になったのが、大阪府八尾市にある古民家を改装したギャラリー。元々は250年前に建てられた木綿問屋だそうだ。

長らく倉庫代わりに使われていて誰も住んでおらず、当主のお父様が仏間と神棚に毎朝お参りに入るだけという状況だった。

それを相続に伴って、いよいよ残すか壊すかという選択を迫られることになったとき、現当主の萩原浩司氏が「残す」と決断。「茶吉庵ギャラリー」と銘打った展示スペースに改装して、カフェを併設したり、中庭をオープンスペースにしたりして、とくに若手アーティストたちの作品発表の場として活用されている。

またワークショップをやったり木工作家の作業場などがあったりして、若いアーティストにとっては隠れ家的な情報発信の場にもなっているという。

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新成人展は、茶吉庵ギャラリーで2月24日(木)まで開催。

https://chakichian.co.jp/2021/02/10/%e6%96%b0%e6%88%90%e4%ba%ba%e5%b1%95/

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