ミャンマー・クーデターから2週間 防犯用資材が高騰、ネットも遮断…現地の治安悪化に進出企業緊張

治安 太郎 治安 太郎

 ミャンマーで2月1日、国軍によるクーデターが発生し、アウン・サン・スー・チー氏やウィン・ミン大統領など政府高官や与党・国民民主連盟(NLD)の幹部たちが拘束された。このクーデターの背景には、去年秋の総選挙の結果、NLDが476議席の396議席を獲得し、国軍系最大野党の連邦団結発展党(USDP)は33議席に留まり惨敗したことがある。国軍は選挙で不正があったとし、政府や与党に対して再選挙の実施を要求していた。現在のところ、アウン・サン・スー・チー氏やウィン・ミン大統領の拘束は続いており、問題は長期化しそうな状況だ。

 それ以降、最大都市ヤンゴンや首都ネピドー、第二の都市マンダレーなど各地では市民による抗議デモが発生し、国軍の行動を非難し、スーチー氏らの解放を求める声が各地から強まっている。ネピドーでは警察官がデモ隊に向かって発砲し、これまでに2人がけがをし、1人が意識不明の重体になったとの報道もある。ヤンゴンにある中国大使館の前では、軍事クーデターを事実上静観する中国に反発する市民らが英語や中国語を交えて抗議活動を行っている。また、混乱が続くなか、ヤンゴンでは防犯用に必要な懐中電灯、電球、電気コードなどが品薄状態になり、これらの電気器具・部品の値段が急騰し、15日未明からはネット通信が遮断されたという。今後のさらなる治安悪化が懸念される。

 軍事クーデター自体はミャンマー内政の問題であるが、近年、ミャンマーへの日系企業の進出は増加し、ミャンマーは新たなフロンティアとして注目されている。近年は全日空の直行便が運航するなど、両国の経済関係は確実に緊密化してきた。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2020年12月現在でミャンマー日本商工会議所に加わる日系企業は433社に上り、近年増加傾向にある。

 日本は独自に国軍と関係を築いてきたことから、現地の日本権益が直接標的になることはないだろう。しかし、電話やネット回線へのアクセス制限、デモの暴徒化、夜間外出禁止令の発令、公共交通機関の停止などによって、日常生活での制限が増えるだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクは十分にある。事実、現地在住の日本人ジャーナリストが取材中に暴行を受けたとみられ、また、2007年には日本人カメラマンが撃たれて死亡する出来事も起こっている。

 筆者の周辺にもミャンマーへ進出する企業の社員や、現地で活動する人々がいるが、外務省が発信する注意喚起に従っていれば基本的に大丈夫だというが、クーデターの長期化やそれに伴う治安悪化によって、周辺でデモや衝突が発生することを懸念しているとの声を話していてよく聞く。また、米国のバイデン政権がミャンマー国軍の幹部や関連企業への制裁発動を決定したことから、今後の経済への影響を懸念しているとの声も聞こえる。ビール大手のキリンは今月5日、国軍との取引が指摘されるミャンマー企業との合弁を解消すると発表している。

 一方、日本とミャンマーとの関係で、日本には3万人を超えるミャンマー人が暮らしており、日本各地の企業でアルバイトなどとして働く若者が増えている。筆者も居酒屋やコンビニでミャンマー人の人と会うことがよくある。在日ミャンマー人たちは現在日本外務省やミャンマー大使館などで、今回のクーデターに抗議する活動をしている。日本とミャンマーとの関係は近年相互に緊密化している。現地に進出する日系企業、そして国内企業としてもミャンマーの重要性は飛躍的に増している。

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