自動車と一輪挿しの関係 ダイハツの純正オプションで話題、VWニュービートルには標準で装備されていた 

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 「ダイハツのメーカー純正オプションに一輪挿しがある」というのがTwitterでちょっと話題になっています。自動車に一輪挿し。確かにちょっと珍しく感じるかもしれません。しかし、自動車の文化が豊かなヨーロッパなどでは、特に珍しいものでもないようです。

ダイハツが用意していた純正アクセサリー

 正式な名前は「ダイハツ純正フラワーポット」。ミラやタント、ムーブなどにオプションで設定されていました。それぞれの車種ごとに専用で設計されているものなのか、それとも共通部品なのかはわかりません。08257-K2003という品番でしたが、いまは廃盤になっているようです。

 先が細くなった試験管のような本体と、ダッシュボードやその脇に固定するための部品、ねじ、それと「フラワーポットには絶対に水を入れないでください。」というコーションシール、取付・取扱要領書がセットになっていました。

 そう、水を入れるのは御法度だったのですね。理由ははっきりしませんが。やはりこぼれると何らかのトラブルが懸念されるからでしょうか。でも、ドリンクホルダーよりは被害が少なそうですけど。「一輪挿しの水をこぼさないようにドリフトする練習」とかする人が出てくると危ないからでしょうか。

 とにかく話題になるくらいですから、日本の自動車メーカーとしては珍しい部品だったといっていいのでしょう。

あのフォルクスワーゲン・ビートルでは伝統的な装備だった

 フォルクスワーゲン・ビートルというと、1938年から2003年までの間に世界最多の2150万台以上が生産された伝説的なクルマですが、その初期モデルから陶器製の一輪挿しがオプションで設定されていた、といわれています。

 「事故の際に危険」という理由で、ドイツでは一時禁止されたこともあったそうですが、ビートルのダッシュボードに一輪挿しはよく見られました。そしてその後、後継モデルとして「ニュービートル」が登場したときには、一輪挿しは標準装備になっていました。

 フォルクスワーゲンとしての正式なビートルの後継車はゴルフであって、ニュービートルはビートルへのオマージュというか、ビートルの形を懐かしむ層に向けた新しいプロダクトだったので、そこに強くアピールする意味で「よりビートルらしさ」を感じさせるものとして採り入れられたのかもしれません。

 またその頃はディーラーで、この一輪挿しに挿すための純正の花も売られていました。もちろん本物の花ではありません。フラワー・フレグランスというもので、芳香剤を兼ねたものです。

 その後モデルチェンジした「ザ・ビートル」でも、一輪挿しは標準ではなくなりましたが、オプションで設定されていました。

自動車文化のゆとりを感じる装備

 私事ですが、筆者は以前フィアット・バルケッタというイタリア製のオープンカーに乗っていました。友達から安くで購入した古いクルマでしたが、乗り込むといつも独特な甘い匂いがしました。調べてみると、新車から標準で座席の下にフレグランス・シートというものが装備されているということがわかりました。この車種に限らず、アルファロメオなどイタリア車にはしばしばこれが装備されているようです。

 芳香剤は日本でもカー用品店などでよく売られていますが、新車から標準で装備されている辺りがイタリア車っぽいなあと思いました。

 フォルクスワーゲンの純正一輪挿し、そして純正フラワー・フレグランスなどにも通じる部分があると感じます。クルマを楽しむ文化とでもいいましょうか。

 そういう意味で、オプションとはいえ純正で一輪挿しを用意していたダイハツというメーカーに、ちょっと嬉しくなってしまいました。こういうゆとりのある自動車文化が育てばきっと、道路の交通全体にも緩やかないい空気が流れるんじゃないでしょうか。

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