デートの帰り道、後続の車が執拗にあおってくる。速度を落とすと、並走して何かわめいている。しつけーやつらだ。向こうは2人だが、腹を決めた。オレも漢(オトコ)じゃ。「いてまうぞ!」とばかり車を降りると、そこで告げられた驚愕の事実─。
「優良少女ファミリヤン」などの作品がある、カワカミ@漫画家(@JUNKIES_1)さんが投稿した4ページの実体験漫画「本当にあった怖い話」が話題です。投稿には7万超のいいねが寄せられるなど大反響。「Twitterに漫画をアップしたのも初めてなのに…」と驚くカワカミさんに話を聞きました。
話題になった漫画は、今から15年ほど前、カワカミさんが夜道を走っていた時に体験した内容を描いたもの。
―展開にはらはらしました。
「こっちは完全に『その気』で車を降りているわけですから、うれしいやら恥ずかしいやら申し訳ないやら…。あのお二人には感謝の気持ちしかありません。あらためてお礼申し上げます!」
―助手席の彼女さんは…
「『彼女』ではありません!作中にも描いた通りあくまで、いい感じだった女の子です。なので、あの後もしっかりと家まで送り届けてそこでちゃんとバイバイしました。何もしていません」
―あおり運転を受けるのは日常だったのですか。
「あの時後ろの車から受けた行為を、あおり運転と判断したのも、当時住んでいた豊岡市は1人1台のような車社会だったので、リアルなあおりを受けることがしばしばだったからです。車をいじったりするのが好きじゃなかった僕は、当時ほぼノーマルのワゴンRに乗っていたので、それも原因と思います。あおり運転をする連中も、ゴリゴリに改造したセルシオは避けますからね」
―シンプルにあおられたとき、どうしていましたか。
「当時は若かったものですから、あおってくる車が後ろに来たら窓を開けて、身を乗り出し振り返って『誰をあおってるか分かってる?』とにらみつけてました。そしたらみんな分かってくれて、車間距離を空けて、次の角で曲がって行ってくれました。まさかドノーマルの9年式ワゴンRから、ヤンチャそうな兄ちゃんが『上等』と言わんばかりに振り返ってくるとは思ってないんでしょうね。漫画では幸い夜だったので、あの展開になりました」
―そういえば、そのころの写真があるそうですね。
「専門学校を卒業し、漫画家を目指して上京するまでの間に、地元で草野球チームをゼロから作って活動していました。高校中退や部活動の方針に反発して辞めた子など、ちょっとヤンチャな連中が集まったチームだったのでまとまりを持たせるのが大変でした。写真中央で頭に白いタオルをまいてポーズを決めているのが僕です」
―…皆さん、めちゃくちゃ迫力あります。
「ある日、ナイターでの試合後、国道9号線沿いの「オレンヂ」というレストラン(現在は閉店)に、何台かで行くことになりました。先頭は僕の車だったのですが、店の駐車場に入ろうとして縁石に前輪を乗り上げてしまいパンク。車は片側車線をほぼ封鎖した状態で身動きが取れなくなってしまったんです。交通量が多い時間帯だったので付近は大混乱。すると草野球チームのメンバーが車道に出て頭を下げて交通整理をしてくれたり、近くのスタンドに助けを呼びに行ってくれたりしました。僕はただただ感謝と感動。チームのみんながひとつにまとまったのはあの時が初めてでした。もちろん店での打ち上げ代は喜んで払わせていただきました」
―すてきなエピソードです。あらためて今回の漫画が拡散したことについて。
「この漫画を描いたきっかけは僕たちのやっているYouTube『漫画家チャンネル』の企画の1つでした。その企画が週刊連載中を思い起こさせるほど、とにかくキツくて徹夜で必死に描いていました。なので、ここまで拡散していろんな方に読んでもらえてととにかくうれしいです。もちろんリプライや引用リツイートなどもすべて読ませていただきました。共感の声が多かったこともうれしかったですね」
―愛車のワゴンRは。
「地元では中古で買った9年式のワゴンRを乗りつぶしたあと、新車18年式のこれまたワゴンRに乗り換えました。上京してからはマイカーは持っていませんが、今でも運転は大好きです。家族や友達と出かける時もわざわざ目的地を遠くに設定してレンタカーを借りています。今の車は給油キャップが車体とつながっているので、置き忘れの心配がなくていいですね(笑)」
カワカミさんは「皿そば」で知られる兵庫県出石町(現豊岡市)の出身で、高校卒業後、アートカレッジ神戸まんが学科に進みました。漫画家になるため24歳で上京。アシスタントを経て、28歳で現在の「カワカミ」とは別名義で漫画家デビュー。集英社のヤングジャンプで連載された「優良少女ファミリヤン」は、ちょっとヤンチャな女子高生たちのいつも集まるファミレスでのたわいもないやりとりを描いたショートコメディ漫画です。「Twitter漫画はできる限り続け、今回新たにフォローしてくれた方の期待に少しでも応えていきたいなという思いが芽生えました」と話しています。
■漫画家チャンネルはこちら→https://www.youtube.com/channel/UCOEEUZaHYDrgSFq5BHNMrlA