IKEAの組み立て説明書でひらめいた!本文がない「見るだけ」ビジネス書シリーズ100万部突破

金井 かおる 金井 かおる

 「時間がない」「読むのが苦手」ーーこんな悩みを解決する異色のビジネス書シリーズが累計100万部を突破しました。出版のきっかけは、スウェーデンの大型家具店IKEA(イケア)の家具の組み立て説明書でした。

きっかけは「IKEA」と「仏像」

 ミリオンを記録したのは宝島社(東京都千代田区)の書籍「見るだけノート」シリーズ。

 “大人の学び直し”をテーマに2016年に刊行スタート。「ゼロからやりなおし!日本史見るだけノート」を筆頭に、経営戦略やマーケティング、心理学など1月末の時点で40タイトル以上を発行しています。

 企画したのは同社書籍局第1編集部編集長の井上泰さん。井上編集長はIKEAの説明書を見たとき「テキストなしで説明できていることに衝撃を受け、こういうものを勉強本でできたらいいな」と思い立ちます。さらに、仏像のイラスト図鑑からも「学習本の図版も3Dのイラストにしたら面白いな」とインスピレーションを得たといいます。

ビジネス書なのに「本文がない」

 シリーズの特徴は本文がないこと。ページの大部分をイラストが占め、文字は要所要所で数行添えられる程度です。これまでも図解本やマンガ仕立てのビジネス書はありましたが、井上編集長が目指したのは「長々とした本文は一切省き、眺めるだけでだいたいわかる高速学習本」。

 文字だけよりも、マンガやイラストの方が求められているのでしょうか。

 「若い人はスマホの普及により文字を読み書きする機会が減ったと考えています。YouTubeなど動画コンテンツの流行を受けて、文字以外で情報を受け取る機会が増えたと感じています」(井上編集長)

 「イラストは言葉の通じない外国の人でも理解できますし、小さい文字が見えにくい高齢者にもわかりやすいため、グローバル、高齢化社会へ変化してきた現代のさまざまな場面で求められています。生活の中にもイラストを活用したものは増えています」(井上編集長)

絵を加えると記憶に残る

 同社の調査では、文章だけの伝達と、画像を加えた場合を比較すると、72時間後に6.5倍記憶に残ることが分かっているそうです。「心理学の分野でも、文字や言葉だけで伝えるより、同時に画像(絵)を含めて伝えた方が記憶に残り、理解しやすいといわれています」と同シリーズをアピールします。

 購入者からは、「全く知識がなくてもイメージしやすく頭に残る」「どんな本を読めばいいかわからない、難しい専門用語などわからないという人に」「俯瞰できるから大まかに特性を知ることができた」などの感想が寄せられ、難しいテキストに挑戦する前に、まずは手軽なイラスト本で学びたいという傾向が読み取れます。

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