ラッシュ時には座席が天井に上がって3扉→5扉に! 換気もバッチリだった京阪名物・5000系車両が引退へ

新田 浩之 新田 浩之

2021年1月29日、京阪名物である5000系の5扉運用が終了しました。今後5000系は3扉車として6月まで働きます。5扉運用の最終日となった1月29日に5000系に乗車しました。

5扉車にも3扉車にもなる万能車両、5000系

5000系は大阪方のラッシュを解決するために、日本初の本格的な多扉車として1970年にデビューしました。当時の京阪電車は電圧の問題で両数を増やすことは難しい状態でした。そこで昇圧までの間、扉を増やした多扉車でラッシュ時間帯をさばくことを考えたのです。

デビュー時から朝ラッシュ時間帯に運行される区間急行に投入され、ラッシュの切り札として重宝されてきました。現在も京阪本線などで普通を中心に活躍しています。

5000系の最大の特長は5扉車にも3扉車にもなることです。朝ラッシュ時間帯は5扉車として運行されますが、それ以外の時間帯は3扉車に大変身。ドア上にある座席を昇降させることでドア数を調整していました。

「テレビカー」と並ぶ京阪の名物電車として活躍しましたが、だんだんと姿を消しています。2021年1月29日に5扉車としての運用が終了。6月には完全引退し、またひとつ京阪の名物電車がなくなります。

5扉が開いていると、扉ばっかりな電車に

5扉運用の最終日となった1月29日、香里園から5000系に乗車しました。5000系は何かと5扉が注目されますが、京阪では珍しい角ばったスタイルにも注目したいところ。どことなくユーモラスな姿をしています。

5扉が開いていると、扉ばっかりな電車になります。一般的な京阪電車は3扉ですから、扉数の違いは一目瞭然です。また5扉が開くと、窓がとても小さく見えます。

車内にいると5扉のため換気は抜群! 風通しがよく、冬は寒いくらいです。扉間にある座席は3人座るといっぱいになります。

先ほども説明した通り朝ラッシュ時間帯は5扉、昼間から深夜にかけては3扉車となります。5扉時はドア上に座席が「収納」されています。3扉になる際は座席が自動的に降り、ラッシュ用ドア前に座席がセットされる仕組みです。なお座り心地はどの座席に座っても快適です。

 かつては5扉から3扉への「変身作業」は終着駅でも行われ、利用客も車外から観察できました。現在「変身作業」は車庫などで済ませるため、イベント時を除き観察することはできません。

 朝ラッシュ時間帯以外は5扉のうち2扉が「ラッシュ用ドア」となり、ドアが締め切られます。

   ◇   ◇

終着駅の中之島駅に着き、折り返し10時08分発萱島行きとして最後の5扉運用に就く5000系です。

駅電光掲示板の「5扉」という表示も1月29日が最後になりました。1月30日以降、中之島駅の駅電光掲示板の表示は「3扉」のみとなります。

なぜ5000系は引退するの?

京阪電車では5000系よりも古い電車がまだまだ活躍しています。それではなぜ先に5000系が引退するのでしょうか。その背景には京橋駅に設置されるホームドアがあります。ホームドアを設置する際は扉位置を合わせる必要があり、5扉車の5000系はホームドア運用に支障を来してしまいます。「5扉ではなく3扉ならいいのでは」と思うかもしれませんが、3扉でも他の一般車とは扉位置が異なります。

1990年代にはJR東日本や東京メトロ、京王などでも多扉車がデビューしました。しかしホームドアの設置や新線開業による混雑の緩和により姿を消しました。全国的に見ると多扉車は1990年代の鉄道風景を象徴する時代の一コマになりつつあります。

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