ものづくりの町で知られる大阪府東大阪市。そこの町工場をテーマに、世界初のバーチャル展示会がスタートした。工場見学用に整備されたのではない、稼働する生きた7つの町工場のすみからすみまでを映像化。自宅にいながら、レアな工場見学が楽しめる。
動画や写真で、町工場のすみからすみまで公開
今回初めての開催となる「OSAKA町工場エキスポ2020」。専用サイトに登場する7つの町工場は、いずれも東大阪の町工場で、それらが動画や写真で、ここぞという特徴をわかりやすく、魅力的に紹介される。しかも登場する町工場の社長は、眼光鋭いイケメンぞろいだ。
町工場内部は企業秘密だらけ。なので、設置される機械や道具類を外部に見せるのは、これまでタブーとされてきた。しかし「モノは見せても、技術は盗まれない」と、内部のバーチャル公開に踏み切ったのだ。
ポイントは、ただ一方的に動画を見せるのではないこと。全方位カメラで映し出される映像の、ところどころある動画マークやカメラマークをクリックすると、動く機械や案内する社長の動画、また商品や道具の写真が映し出される。「これ、何だろう?」と見たい箇所を何度でもクリックしながら、じっくりマイペースで見て回れる。聞いて理解するより見て納得と、まさに「百聞は一見に如かず」だ。
町工場も、営業力と発信力の時代へ
「きっかけは、新型コロナウイルスです」というのは、プロジェクトの仕掛人で、MP-Strategy(エムピーストラテジー)代表の目黒充明さん。軒並み売り上げが落ち込む町工場の社長らに「コロナが明けたらスタートダッシュが切れるよう、今から準備を」と呼びかけ、応じた7つの町工場が参加した。ほぼ手弁当で作り上げたというWEBサイト「OSAKA町工場エキスポ2020」は、作年11月に公開。
「まるでドラマのワンシーンみたいという、お褒めの声もいただきました」。
公開後は関西圏だけでなく、埼玉をはじめ首都圏からも問い合わせが。目黒さんは、「サイト公開の効果が出るのは半年から1年後。今のうちにしっかり備えるべき」と、IT専門家の顔をのぞかせる。
東京のIT業界で活躍し、約9年前に故郷の東大阪に戻った目黒さん。昔のままの懐かしい町。だが、町工場の営業力と発信力の弱さを危惧していた。まだまだ活躍するFAXや近所の人しか訪れない展示会と、市場の広がりが見込めない現状に「このまま大阪の町工場がすたれてしまえば、人情や、素晴らしいものづくり文化まで失われると思った」。
「OSAKA町工場EXPO2020」は、町工場で働く人の姿を全国に発信して、市場規模の拡大を狙う。「大々的に工場内部を開放して、さらにイケメン経営者の熱い6分間スピーチまで載せた町工場のバーチャルサイト。僕もこんなの見たことありません」。やはり必見は、7人の社長のスピーチ動画という。
次回更新は今年の2月後半から3月にかけて、新たに9社ほどが加わる予定。
就活なのに工場見学もままならない新卒や、既卒の人にも見て欲しいという目黒さん。海外からの視聴も視野に、今後は英語版も作り、ベトナムなど、もの作りに熱心な近隣諸国へのはたらきかけもしていきたいと語る。
■OSAKA町工場EXPO2020 https://vrexpo.jp/index.html