もうひとつは、「受験は通過点。ゴールではなく、スタートである」ということです。
合格という“ゴール”を目指してラストスパートをされている中、「そんなこと言われても…」とお思いかもしれません。ただ、やはり、大切なのは、これからあなたが、その場所で、何を学び・考え、どう過ごし、悩みながら、未来を作り上げていくか、だと思うのです。
将来の夢を抱いている方も、まだ思い描けていないという方も、いらっしゃると思います。いろんな不安もあると思います。これから、多くの友人や先生たちと出会い、勉学や部活・サークル活動や、趣味、アルバイトやボランティアなど、様々なことに取り組まれ、その中で、たくさんのことを吸収し、成長していかれることと思います。きっと、これからワクワクすることが、いっぱいありますよ。
あなたの眼前には、多くの可能性・道が、広がっています。紆余曲折があってもいい。“一般的に良いと思われている道”なんかじゃなくていい。あなたの人生を切り拓くのは、あなた自身です。
世界はめまぐるしく変わっていきます。それに対応して柔軟に変えていくということと、一方で、普遍的で変わらないもの・ブレない軸を持ち続けることと、両方必要だと思います。そういうことも、学び、考え、身に付けていってください。
これからの世界をよくしていくのは、皆さん方一人ひとりの力です。
◇ ◇ ◇
忘れられない光景があります。
小学生の頃、同級生に、とても賢くしっかりした女の子がいました。彼女は放課後、友達と遊びませんでした。塾にも行きませんでした。ある日、集合住宅の前を通りかかったら、その子は、屋外に設置された洗濯機でお洗濯をしていて、幼い弟さんが、ぴったりとくっついていました。声をかけることはできませんでした。
私は思いました。そうか、子どもが、自分のためだけに自分の時間を使っていい、というのは、実はとてもありがたいことなんだ。そして、もし自分になにかしらの能力があるのだとしたら、それを人のために役立てられるように、一所懸命がんばろう。
以前より、また、コロナ禍で、経済的に苦境にあるご家庭も多くあると思います。どうか諦めないでください。周囲の人たちの助けや奨学金などで、道を切り拓いていった人たちを、たくさん知っています。たとえ絶望の淵にあっても、必ず希望はあります。
◇ ◇ ◇
寒い日が続きます。皆さん、どうか体調に気を付けて、最後まで、やり抜いてください。
明けない夜はない。やまない雨はない。もちろん、また繰り返し、夜は来て、雨は降るわけですが、それでも、必ず、朝は来ます、空は晴れます。それが人生です。
春は、すぐそこです。