自衛隊駐屯地の中にコンビニが!? レジ周りは普通の店舗と同じだけど…一角に迷彩柄グッズがズラリ

平藤 清刀 平藤 清刀

陸上自衛隊駐屯地の「中」にはコンビニエンスストアがあって、日用品、食料品、デザートなど「外」の店舗と同じ商品が買えるほか、ここでしか手に入らない商品もある。

違いは一目瞭然…「外」のコンビニではお目にかかれない商品の数々

自衛官で曹(下士官)士(兵)の階級にある者のうち独身者は、原則として営内(駐屯地・基地内)に居住することになっているから、日常生活に必要な物品は駐屯地にいながら調達できるように売店が設置されている。陸上自衛隊に限らず、海上自衛隊や航空自衛隊の基地内にある売店は、かつて共済組合直営と民間委託の2系統で運営されていた。それが今では、ほとんどがコンビニエンスストアに入れ替わっている(100%かどうかは未確認)。

自衛隊の中のコンビニって、何かしら変わった商品が売られているのでは? そんな好奇心を抱く人は多いだろう。

陸上自衛隊千僧駐屯地で営業する「ファミリーマート千僧駐屯地店」(兵庫県伊丹市)を取材した。

株式会社ファミリーマート西日本エリア本部/兵庫・中四国リージョン/塚口営業所長・出口知史さん、同所長代行・中川浩充さん、店長・佐々木尚美さんにお話を伺った。

――千僧駐屯地にフランチャイズでファミリーマートが入ることになった経緯はなんでしょう?

「5年に1度、入札の公募があります。以前は本部直営で営業していたのですが、フランチャイズ店に切り替わることとなり、いろいろなご縁があって、私たちが経営することになりました」(佐々木)

 ――駐屯地の外にある店舗とのいちばんの違いは何でしょう?

「パッと見てわかるのは、訓練用品があることです。ほかには、お土産関連ですね」(佐々木)

「たとえば千僧駐屯地オリジナルのマスコットキャラが入ったクッキーとか、千僧駐屯地のロゴ入りタオルなどがあります」(中川)

ちなみに店内スペースのシェアは、訓練用品と一般の商品でほぼ半々とのこと。訓練用品のコーナーには、リュック、バッグ、書類入れ、弾帯、小物入れ、靴手入れ用ブラシ、靴墨、シャツ、靴下、手袋など自衛官が日常生活や訓練で必要なアイテムがズラリと並ぶ。

これら訓練用品の仕入れ先は現在2社あって、アイテム数はざっと1000ほどあるという。

――創立記念式典などのイベントで駐屯地を開放するとき、お店を訪れる一般のお客さんでも訓練用品を買えるのですか?

「売り場に出ているものは買えます。一般の人が買えないものは、別注文で取り寄せたり業務隊の厚生科で扱っていたりします」(佐々木)

一般の人が買えないものの一例をいうと「教範」がある。いわゆる訓練用の教科書と思っていい。自衛官でも慎重に扱わねばならないものだ。

若い自衛官の人気商品は男女ともにデザート

――どんな商品がよく売れますか?

「よく出るのは手袋、靴墨、カラビナですね。食品だと、カット野菜と1回分の小袋ドレッシング。カット野菜の袋の口を開けてドレッシングを流し入れ、開け口をぎゅっと握ってシャカシャカとシェイクして食べるそうです」(佐々木)

「パックに入ったサラダもありますが、値段と量を比べたら、リーズナブルに生野菜が摂れるからでしょうね。皆さん、健康志向が強いです」(出口)

「昨年の春頃は、コロナの影響で外へ出ることが制限されていたせいで、プラモデルもよく出ました」(佐々木)

そういえば外のファミリーマートで、プラモデルを見かけたことがない。これも駐屯地の中ならではの商品ではないだろうか。

 

――時季によって売れ筋の商品は変わりますか?

「訓練用品では、今頃の季節だと防寒具がよく売れます。一般商品では、他店ではバラ売りしている10円のスナック菓子を、季節に関係なく箱売りしています。個人で箱買いしていかれることがあります。外出や休暇から戻ってきたときに、居残りしていた同僚へお土産にしたり、警衛に差し入れしたり。1本10円が30個入りですから、箱で買っても300円でお手軽ですね」(佐々木)

警衛とは、駐屯する部隊が輪番制で勤務する駐屯地警備のこと。24時間勤務で緊張を強いられるため、ほっと一息つける差し入れはたいへん嬉しいという。

――演習の前後で売れ行きが変わることはありますか?

「演習に入る前は手袋、消耗品、あとは2リットルのペットボトルでミネラルウォーターやスポーツドリンクが箱単位で売れます。それからサラダチキンが年間を通して売れます」(佐々木)

「サラダチキンは比較的日持ちしますし、パッケージを開けたらすぐ食べられるお手軽さが人気の理由でしょうね。しかも高たんぱく低カロリーで、体づくりに適しているようです。ほかにプロテイン入り飲料もよく売れます」(中川)

――駐屯地は、いうなれば「閉鎖されたエリア」ですから、企業努力で顧客を増やすことが難しいと思いますが、売り上げの波というものはあるのですか?

「売り上げの波はあります。たとえば、ある部隊が演習に行って駐屯地を空けたら、その分の来客数が減ります。逆に、よその駐屯地から部隊が出張してきたら、その分が急に増えます」(佐々木)

――女性自衛官も勤務されていますが、買っていく商品に男女差はありますか?

「大きな差は感じません」(佐々木)

「男性隊員が、課業終わりとか浴場から居室へ戻る途中に立ち寄って、デザートをよく買われています。クリスマスにミニケーキを多めに仕入れてみたら、意外に男性隊員がそれを片手にレジ待ちの列に並んでいるのを見て『男性にも需要があるんだな』と思いました」(中川)

「ほかには『あんこ』系のデザートとか、シュークリームも人気です。女性隊員もダイエットを気にしつつ『デザートは別腹だから』といいながら買っていきます。その辺りの感覚は、一般の女性と変わらないと思います」(佐々木)

営内居住者の年齢層は20代前半が多い。時間帯にもよるが、利用者は20代前後の若い隊員が中心だ。

「中のコンビニってどんな感じって訊かれたら、一言でいうと大学の生協みたいなイメージですかね」(佐々木)

最後に余談ながら、「千僧」の読み方は「せんぞう」ではなく、正しくは「せんぞ」だそうだ。

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