「このまま飲食店が悪者になるのも嫌」
「外食がダメなわけじゃない。食事中の無防備かつ至近距離での会話がいけないのだから、黙って食べれば問題ないはず。」
食事中に会話しないことを推進する「黙食」の呼びかけがSNS上で大きな注目を集めている。
この呼びかけを行っているのは福岡市の人気カレー店「マサラキッチン」オーナーの三辻さん。
インパクトのあるポップの画像を無償提供し、飲食業の従事者としてコロナ禍に立ち向かおうという三辻さんの熱い思いに対し、SNSユーザー達からは「素晴らしいですね!医療従事者ですがコロナ禍でも安心して美味しいものを食べに行きたいです。唯一行ってるラーメン屋さんも注意事項のはり紙をしたり、おしゃべりするお客さんには毅然と注意してくださります。このポスターがある店に食べに行きたいです。」「黙食!これ使わせてください!!貼り出したいです」「お寺の食事とかそんな感じですね。流行って欲しい」「正しいリテラシーを持って困難に立ち向かわれるミツジ様に、心より敬意を表させていただきます。」など数々のコメントが寄せられている。
この「黙食」の呼びかけはどのような経緯で始まったのだろうか?三辻さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):「黙食」の呼びかけを始められたきっかけをお聞かせください。
三辻:きっかけは「自分のお店、お店に来てくださるお客様、支えてくださるスタッフのため」という超狭いところです。
SNSを眺めていると、「自分はマスクや手洗いなど感染対策に気をつけてお店に行ったのに、隣の席の団体がマスクもせず、大声で喋っていて不安を感じた」という趣旨の投稿が沢山あり、私自身もそう感じる場面が沢山ありました。
当店は、感染対策として
・ご入店後の手洗い
・ノーマスク入店拒否
・お食事中以外のマスク着用必須
・座席制限
・1グループ1会計
という厳しいルールを徹底してきました。それでも通い続けてくださるお客様は、当店の趣旨に賛同してくださる貴重なお客様です。少なくとも先に挙げたような不安を感じさせてはいけないし、今後イートインが制限される中で生き残るためにも、ルールをより徹底するしかないという結論になりました。
中将:「黙食」というのは簡潔でインパクトの強いフレーズですね。
三辻:三辻さま:最初は「ノーマスクでの会話はご遠慮ください。感染対策にご協力を!」と書いていたのですが、なんとなく高速サービスエリアのトイレで見かけるような「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」に通じる「結果的に矢がどの的にも当たっていない感じ」がしていました。もうちょっと端的でわかりやすい表現はないものかと考えた結果、「黙食」というフレーズを思いつきました。
「黙って食え」というのはかなり強い口調なので「もう少しマイルドにしたほうがいいのではないか」という意見もありましたが、意味と目的を最優先しました。
中将:「ご自由にどうぞ」とポップを無償提供されたことも相まってか、「黙食」の呼びかけは大反響となりました。
三辻:「そう言ってくれるお店を待っていた」というお客様側の声、「思っていてもなかなか注意しづらかったので助かる」という飲食店側の声、どちらからも比較的好意的なご意見をたくさんいただき嬉しかったです。
私はすべての飲食店が「黙食」をやるべきとは思っていません。ポップを無償配布にしたのも「同じように感じる人はいるかもしれない。せっかく作るんだから同じように困ってるお店でも使えるようにしとくか」ぐらいの発想でした。自分のお店の中に合わせて作ったものなので、「もし条件にあうならご自由にどうぞ」という感じです。
すでに実際に使っていただいているお店もあるようですが、特に使用許可を求めたりとかはしていないし面倒なので、どんどんやっていただければと思います。お店の置かれている状況によって、使い所も変わるでしょうし、もっとマイルドにすることも必要かもしれません。そこは使いやすいように改変するなり、書き足すなりご自由にやっていただきたいです。
「マサラキッチン」店舗情報
所在地: 福岡県福岡市南区向野2-13-22 藤ビル1F
アクセス: 西鉄天神大牟田線/大橋(福岡)駅 徒歩4分
営業時間: 月、火、木~日 11:30~15:00、18:00~22:00※緊急事態宣言の影響で変更の可能性があります
定休日: 毎週水曜日
公式サイト:https://masalakitchen.jp/
通販サイト:https://shop.masalakitchen.jp/
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三辻さんがおっしゃるようにすべての飲食店が「黙食」を徹底する必要はないだろう。しかし、それを望む店舗やコロナ感染予防を徹底したいという利用者にとってはこのポップは大きな助けになると思う。三辻さんの呼びかけがより多くの人に伝わることを期待したい。