「なに作ってるん?」生徒たちのそばで作陶を見守る陶芸教室の猫

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 奈良市にある陶芸教室「土楽猫(どらねこ)工房」。主宰する陶芸家・奥田知子さん(62)の飼い猫、茶白の「クゥ」(オス、13歳)は、教室の生徒たちがやってくると体をこすりつけて歓迎。「クゥちゃん先生」と呼ばれ親しまれている。生徒たちの作陶をそばで見守るほか、猫をモチーフにした人気作品を手がける奥田さんのインスピレーションの源にもなっている。奥田さんにクゥとの出会いや教室での様子などを聞いた。

 奥田さん クゥと出会ったのは2007年10月。当時、私は焼き物のまちとして知られる愛知県常滑市の土管坂で、透かし彫りのランプ作品などをメインとしたギャラリーを営んでいたのですが、前を通った散歩中のワンちゃんが吠えるので、なんやろうと外へ出てみると、道路の真ん中に、生まれたばかりのクゥが落ちていたんですよ。おそらく母猫がくわえて運んでいる途中、何かにびっくりして落としていったのかもしれません。

 推定生後3日くらい。乾いたへその尾がついていて、目もあいていませんでした。すぐに保護し、最初は注射器で、その後は哺乳瓶でミルクを与え、お尻をトントンたたいて排泄を促すなど、母猫に代わってつきっきりで世話をしました。

 私の奈良の実家では、母も猫好きで、小さいころから猫に囲まれて育ちました。93年、常滑に行って以来、地域の猫に接する機会はあったものの、もしいい出会いがあれば自分で猫を飼いたいとずっと思っていました。まさかギャラリーの目の前で、生まれたばかりの赤ちゃん猫を拾うとは想像もしていませんでしたが、これも運命だと思い、うちの子にしたんです。好きな言葉の一つに「色即是空」があり、その中の「空」の一字をいただいて「クゥ」と名付けました。

 2013年、常滑から奈良へ戻り、実家で陶芸教室を始めることに。その少し前から猫のいろんな表情やしぐさを土で独自に表現するのが楽しくなり、透かし彫りのほかに、猫をモチーフにした陶器を作るようになりました。

 そう思ったのは、やはりクゥの影響が大きかったです。赤ちゃんのころから現在まで、私の創作をすぐそばで見守ってくれていますし、様々な表情やしぐさをいつも間近でみせてくれますからね。猫の姿をしてるけど、実は人間の男の子なんじゃないかと思って、ひらめくこともあります。だから、私の作品はほとんどが男の子になってしまうんですけどね(笑) 。

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