蛍光色を多用したポップな抽象絵画で知られる画家CBA(シーバ)さんが、2020年4月から神戸・長田の漁港に近い下町に工房を構え、日々創作に邁進している。ファンは海外にも多く、現在はなんと、世界的な高級機械式時計メーカー「フランクミュラー」のスペイン・マドリード店で作品を展示中(2月22日まで)。CBAさんは「縁あって移り住んだ神戸で、自分にできることを探求したい。アートで地域を盛り上げるお手伝いなどができれば」と話す。
CBAさんは普段、主にInstagram(@dmocba)を介して作品を販売。「絵を買う文化」が日常に根づいているイギリスやアメリカ、オーストラリアなどからの注文が大半を占める。こうした活動のほか、国内外のアート展などにも積極的に参加する中で、ギャラリーとしても運営されているフランクミュラーのマドリード店の目に留まり、出品の打診があったという。
「展示は12月から始まり、ありがたいことに、すでに売れた作品もあると聞いています。とはいえ僕はコロナ禍で現地に行けませんので、実際の雰囲気はよくわからないんですけど(笑)」
元グラフィックデザイナーにしてミュージシャン
CBAさんは1965年、大阪府出身。グラフィックデザイナーとして、東京で書籍装幀や雑誌、広告などを20年以上手掛けてきた。並行してベーシストとしても音楽活動を展開。数々のバンドのライブやレコーディング、映画「東京ゾンビ」(2005年)の音楽に参加するなど多彩な経歴を持つ。
「あなたはデザイナーよりも画家に向いている」という知人の一言に背中を押され、2010年11月に画家宣言。抽象絵画の先駆者にして美術理論家でもあるワシリー・カンディンスキーを活動の土台にしながら、筆の要素を“置いていく”感覚と、全体のバランスを大切にする自身の作風を獲得していった。
画材は主に蛍光色のアクリル絵の具を使用。「蛍光色ってやっぱり盛り上がるでしょ。興奮するというか、元気になる。そういうところが好きですね」とCBAさんは語る。「カンディンスキーの古典的な理論を踏まえて、新しい抽象絵画を提案したい。僕の活動は、古いトラックから新しい音楽を生み出すヒップホップの感覚に近いと思います」
コロナ禍のタイミングで神戸へ
神戸で暮らす母の生活をサポートするため、昨春、神奈川県相模原市から移り住んだ。工房は神戸市の文化芸術活動に対する助成制度を活用し、地元の人以外にはほとんど知られていないディープな下町にある古い倉庫をリノベーションしたという。
「移住したのがコロナ禍のタイミングだったので、しばらくは知り合いもいない中で黙々と創作に打ち込んでいました」と明るく振り返るCBAさん。8月頃から少しずつ地元のクリエイターたちともつながりができ、様々な企画の誘いも来るように。今後はこの「駒4工房」を拠点に、地域の力になるような活動を展開していきたいという。
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3月からは、ウェブ上の仮想美術館「In ART」で作品展を開催予定。3DCGを駆使して構築された空間で、誰でも自由に入ることができ、鑑賞から購入までが可能という。
In ART https://in-art.jp/