寄席でバイオリン漫談をやっておりますマグナム小林です。全国津々浦々の寄席に出演しています。北は東北仙台の花座から東京新宿の末廣亭、浅草演芸ホール、名古屋の大須演芸場、関西は大阪天満天神繁昌亭、神戸喜楽館などなど。
こうやって全国各地でお仕事をさせて頂く上での楽しみは、そこでしか見られない鉄道の車両を見て・乗って・写真を撮ること。仲間内では、「マグナムさんは、駅に着くと急にいなくなる」というのが定説になっています。電車に乗って写真を撮る為なら、旅先で朝5時に起きる事もしょっちゅうです。
そんな私が鉄道車両の中で一番好きなのが、国鉄103系電車です。JRが国鉄時代に「新機能通勤電車」として開発した、当時としては最新の電車。この103系こそ、私と同じように北は仙台の仙石線、首都圏全土はもとより名古屋の中央線、関西圏のほとんど、そして山陽本線の広島周辺、福岡の筑肥線と全国各地で活躍していました。
私の103系との出会いは子供のころです。千葉県の実家の近くを総武線が通っていて、このころの総武線はカナリアイエローの103系が走っていました。子供の頃はこのカナリアイエローの103系に乗るのが楽しくて仕方がありませんでした。最新の電車に揺られ、窓の外の流れる景色を眺める。まだクーラーのない車両も結構ありましたが、それでも楽しい。
もともとは、山手線がカナリアイエローだったそうです。でも総武線は千葉に行くので、千葉と言えば菜の花なので、総武線が菜の花をイメージしたカナリアイエロー、山手線がウグイス色になったそうです。まあ、山手線のお古が回ってきただけともいえますが(笑)。
どこにでもあったはずの103系、今は関西でしか見られません。
毎年一週間、大阪の繁昌亭、神戸の喜楽館に出演させていただいていますが、その時の最大の目的は関西にしか残ってない103系に会うためです。103系以外にも201系、117系など関西でしか見られない国鉄時代からの車両が沢山見られます。我々、鉄道マニアにとっては、まさに関西は動く鉄道博物館です。
関西の103系は東海道線と阪和線がスカイブルー、大阪環状線と桜島線、片町線がバーミリオンオレンジ、関西本線がウグイス色、福知山線がカナリアイエローでした。関西は関東などに比べだいぶ頑張っていましたが、2000年以降引退が相次ぎます。
現在でも見られる103系は、京都駅で見られる奈良線のウグイス色の103系。奈良線は非電化の時代が長かったですが、平成以降は103系の宝庫に。それでも、今は205系に押されて少なくなってきました。
他にも103系に出会える路線があります。それは、関西の人でもほとんど乗った事がない和田岬線です。スカイブルーの103系。神戸の喜楽館の帰りに、わざわざ神戸駅から兵庫駅まで行って乗りました。終点の和田岬駅は車止めがポツンとあったりして、いかにも終点という感じで趣があります。昼間に和田岬線は走ってないので、車庫に回送する時に神戸線を走っている姿が見られます。
そして姫路-寺前間を走る播但線。姫路で泊まりの仕事があった時に乗りました。ここの103系は播但線オリジナル色のワインレッド。とてもかっこいいです。なぜ、この色を都会で使わなかったのか。惜しい。
関西ではあと加古川線でも103系が走っていますが、残念ながらまだ未乗車です。ただ、加古川線の103系は前面などかなり改造が施されているので、あまり103系って感じがしません。でも、乗ればやっぱり103系だなと思うでしょうから、一度乗ってみたいです。
正直なところ、今103系に乗っても決して乗り心地は良くありません。でも子供の頃、ワクワクしながら乗っていた時代を思い出させてくれます。そんなワクワク感を味わいたいのです。だから、関西の103系にはもう少し頑張って欲しいです。
◆マグナム小林(まぐなむ・こばやし) 1971年千葉県千葉市に誕生。1994年8月、立川談志に入門、2000年8月上納金未納のため破門。以降、バイオリンエンターテイナーとして活動を開始。擬音ネタや東京節にあわせたなぞかけ、バイオリンとタップダンスをあわせた芸で多くの聴衆を魅了する。落語芸術協会と東京演芸協会に所属。千葉市立千葉高校時代には野球部のキャプテンを務めた。プロレスや競馬にも造詣が深い。
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