コロナ禍のロサンゼルスで、命を助けるお手伝い 子猫の「フォスターペアレンツ」になって知ったこと

渡辺 陽 渡辺 陽

2020年、コロナ禍の日本では、犬や猫の譲渡会が開けなくなり、ZOOMを使って非接触での譲渡が試みられました。ボランティア活動も新しい局面へと移行する必要に迫られていますが、米国ロサンゼルス(LA)では、Foster Parents(フォスターペアレンツ・仮の里親)の募集などを非接触で行っています。駐在員の妻で、LAでフォスターペアレンツを経験した冨永さんに話を聞きました。

コロナ禍でも活動できるフォスターペアレンツ

――フォスターペアレンツをしようと思ったきっかけは?

冨永 「私たちは猫派ではなく犬派だったんです。夫の転勤でロスに住むことになり、かねてから興味のあった、シェルターでボランティアをしようと思っていました。トリマーの学校に通って資格を取ったのですが、さあ、これから活動しようと思った矢先、2020年3月からコロナが流行りだし、外出自粛要請されました。

そこで、私は、LAに住んでいた経験のある奥様が書いていたブログで、LAに住んでいた間にやってよかったこととして挙げていた、フォスターペアレンツを思い出したのです」

――フォスターペアレンツとは、日本で言う預かりボランティアのようなものでしょうか。

冨永 「まだ里親に出すには早い、ケアが必要な犬猫を、ワクチン・狂犬病の注射・避妊/去勢手術が終わるまでの一定期間預かり、身体がしっかり健康になるまでお世話し、同時に人間に慣れさせるため愛情をたっぷりあげる仮の里親のことです」

LAでは、トイレの砂、容器、餌水入れ、タオル、缶詰、カリカリフード等々、お世話に必要なものは全てシェルターが貸してくれます。こちらが提供するのは、スペースと愛情だけ。不安なことや質問があれば、シェルターのコーディネーターがいつでもメール/電話で対応してくれます。コロナで外出できないのであれば、ずっと家にいて世話することができるため、今自分にできることはこれだ!と思い、夫の了解を得て、7つの保護施設にコンタクトしました」

未経験でも大丈夫、送られてきた資料で勉強

――未経験でもできるのでしょうか。

冨永 「本来であれば、希望者はシェルターでフォスターペアレンツの心構えなどの講習を受けるのですが、それもコロナ禍ではできないため、家族構成(先住ペットがいるか、小さい子供がいるか等)、ペットを飼った経験、預かる子の状態の希望(数時間置きにミルクをあげる子、自分で食べられる子がいいか等)、なぜFosterしたいか等、細かいアンケートを提出した上で、お世話の仕方に関して参考となるビデオや、幼い犬猫の飼育方法がまとめられたものが送られてきて勉強しました」

――犬のフォスターペアレンツを希望されていたのですよね?

冨永 「私は100%犬派だったので、犬を預かりたかったのですが、LAでは、コロナ禍で友達に会えない子供たちが犬を飼いたいと親にお願いし、里親になる人が急増し、シェルターから犬が消えたとのことで、フォスターペアレンツの出番なし。子猫であれば、3~11月は繁殖期でお世話の需要があるから、子猫を預かれるか聞かれ、命を助けるお手伝いができるならば、子猫でももちろんOKということで、ご連絡しました。猫は今まで飼ったことがなかったので、シェルターからの事前勉強資料はとても助かりました」

――実際の猫の受け渡しは、どのように行われたのでしょうか。

冨永 「シェルターから朝8時頃連絡があり、『一昨日子猫が届けられたので、昼頃には迎えに来てほしい』と言われました。急いで部屋の隅にシートを敷き、段ボールで壁を作り、子猫が自由に動けるスペースを作成。車で20分ほどのシェルターに夫婦で引き取りに行きました。このシェルターは市が運営しており、獣医さんも常駐しています。コロナで対面接触を避けるため、シェルターに着いたらスーパーのカートに必要な餌やタオル等、全て入れておいてくれました。ミャーミャーと鳴き声のする子猫も段ボールに入ってカートに置かれ、それをスタッフが私たちの車まで運んでくれ、引き渡しは5分もかからないほどでした」

すべてのペットに幸せになってほしいという思いが共有されている

――Donation(ドネーション・寄付)という考え方について教えていただけますか。

冨永 「日本でも、いきなり里親になることはハードルが高い場合もあると思いますし、また、里親のおうちで飼われやすい犬猫を育てる(里親にまだ渡せない期間、シェルターの檻の中に入れておくのではなく、家庭で愛情をいっぱい注ぐ)、フォスターペアレンツ制度がもっと広がってほしいと思います。LAでは犬猫の保護活動に積極的で、販売目的でペットショップに犬猫を置くことは禁止されています。また、Donationの機会も多いです。

友達が、『自分に誕生日プレゼントをくれる予定なら、現金でお願い。そのお金をシェルターのDonationに回すから。それが私へのプレゼント』と言っていたのには、目から鱗でした。ペットショップにも、”使わなくなったグッズがあれば寄付してください”と書かれた箱が設置されています。保護施設に回すのだと思います。

日本よりも、全ての犬猫に幸せになってもらいたいという思いが広く持たれている気がします。このような考えや協力が普及されているからこそ、フォスターペアレンツが必要とする、グッズも餌もトイレの砂も、惜しみなく無料で提供することができるのだと感じます。日本も、そのような考えや行動のサイクルが普及されるといいなと思います」

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